- 作者: 川喜田二郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1967/06/26
- メディア: 新書
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まあ何を今更という感じのKJ法の原典です。
どちらかというと手法よりも理論重視で、非常に学術書っぽいです。
カタイ文章で、気軽に読もうと思うと少々辛いです。
現代では古くなった内容もありますが、今でも当てはまることが結構あります。
…という内容を書こうとしていたのですが、Passion For The Futureさんの書評で書きたいことたくさん書かれてるんですよね。
私は、そちらに書かれてないことを中心に書くとしましょう。
KJ法は、ものすごくおおざっぱに言うと以下のような流れになります。
KJ法の流れ
- 問題提起(p26)*1
- 情報収集:重要なことは以下の3つ。
- 情報収集の前に仮説をあまり作らない(p26)
- 多角的に、多様な情報を集める(p33):実験のように、着眼した情報だけ集めてはダメだということです。
- 「何でも見てやろう」という気持ちで、なんとなく関心を引く情報は全て集める(p33,34)
- カード化(情報の単位化)
- グループ化(情報の総合化・圧縮化)
- 図解化:グループ同士の関係を図式化します。それは因果関係であったり、時系列で並んでいる場合もあります。
- 文章化:上で作った関係図を元に文章化します。注意点は、「叙述と解釈とを区別すること」です。(p100)また、この文章化の過程で、整理された情報を元に新たな発想が生まれていきます。(p103〜111)
- 新しいアイデアが生まれたのなら、それを元にまたカード化を行い、KJ法を々行います。
また、KJ法を行うときに必要な能力として以下のものを挙げています。
KJ法に必要な能力・精神(p154〜155)
- 探検的思索力:なにものにも囚われず、問題を追って未知の世界をどこまでもさまよう能力。
- 情報の単位化能力
- 情報の圧縮化能力
- グループの空間配置の能力
- 情報の連結能力
- 発想力
- 素直にデータに耳を傾け、素直にそれに従う心の姿勢
- 叙述と解釈を厳密に区別する精神
これだけ見ると他のサイトとあまり変わらないじゃないか、と思われるかもしれませんが、私の内面的にはかなり理解度が違います。
結局うちを含めた多くのサイトで書いてあるKJ法の説明は要約に過ぎないのであって、その言葉の意味するところはやはり原典に当たらないとわからないのではと思います。
この本の後書きでは、このようなことが書いてあります。
(複雑化し、誰にも把握できなくなった現実の)ダイジェスト版が氾濫する。直接情報でなく間接情報がますます人びとを取りまき、それがあたかも第二の現実のように見えてきて、人びとを支配しはじめている。(p207)
このネット社会の時代、情報は溢れかえっています。こういうときにこそ、原典に当たることの大切さを考えなければなりませんね。
蛇足:KJ法とはてなアイデア
この本では衆知*2というものについて言及しています。
衆知を集めるときも、百人、千人の意見をいっぺんに統合できるとするのは、たいへんな思いちがいである。一時的な小集団をまず作るべきなのだ。(p162)
小人数の知恵を組み立て、そこから生まれた知恵を持ちよって、またもう一段上位で数チームの知恵をさらに組み立てるという形である。(p163)
これを見てふと思ったのがはてなアイデアのこと。
はてなアイデアでも、個々のアイデアだけを見るのではなく、それらをKJ法などを用いてうまくまとめたら、もっと色々なものが見えてくるのかもしれないな、と思いました。
まあ私ははてな社員じゃないのでそこまでやりませんし、優秀なはてなの社員はもうとっくの昔に思いついていることなのかもしれませんが。