重力ピエロ

重力ピエロ (新潮文庫)

重力ピエロ (新潮文庫)

主人公・泉水(いずみ)とその弟・春(はる)の兄弟と、連続放火事件との関わりを描いたお話*1

キーワードは「遺伝」でしょうか。
泉水は遺伝子を扱う会社*2に勤めていますし、劇中でもDNAの話などがあちこちに出てきます*3

一応ミステリーという括りになるのでしょうが、血みどろの話ではありません。
重すぎず、しかし軽すぎずといった感じで私としては非常に読みやすい本でした。

ていうかトリックを推理して楽しむとかいう展開期待すると多分すごくつまんないです。
そういう派手さはありませんから。


とにかく、言い回しがすごくかっこいいです。
私が気に入った文章の一部を紹介します。

「目に見えるものが一番大事だと思っているやつに、こういうのは作れない」
――盲目のサックス奏者、ローランド・カークの曲を聴いて
(p.106)

「楽しそうに生きていれば、地球の重力なんてなくなる」
(p.110)


この2つの台詞、これらはともに父のものです。
この父がいいことをたくさん言うんですよね。

「お前は俺に似て、うそが下手だ」
(p.457)


一見何の変哲もないこの台詞、その重みは読めばわかります。


また、春の純粋なまでの正義感の強さがすごくいいですね。

ちょっと生意気なクラスメイトの女の子を襲う不良男子生徒をバットでぶちのめす高校生の春。
礼を言う女子生徒までも、「腹立たしい」という理由で鳩尾をバットで突いて倒してしまいます。
独特の価値観を持つ春の姿もまたこの作品の魅力ですね。

*1:嘘入りまくりですが…

*2:曖昧な表現ですが、実際遺伝子を扱う仕事なら何でもやる会社のようです

*3:ぶんぶんがみたら怒りそうです