今日のクローズアップ現代:演歌の逆襲

今日のクローズアップ現代がとても面白かったのでメモ。
……といっても見てるときにメモとったわけじゃないのでところどころ誤記があるかもしれません。

概要

長くなったので概要説明。
忙しい人はここだけ読めばいいです。
要するに、最近演歌バカ売れだけどなんでやねん、という話。
その原因は今までの演歌の常識を破りました、って話。
……要約すると身も蓋もないですね。

オープニング

今、演歌の売上げがすごい勢いで伸びてるそうです。
2000年でシェア3%だったのが、2007年にシェア10%でその勢いはさらに強くなっているとのこと。
その原因を探るのが今日のテーマ。

JERO

代表作「海雪」は20代の若年層に支持されている。
その仕掛け人(名前忘れました)は作曲者の宇崎竜童にサビを何度も作り直しさせたそうです。
宇崎竜童、作曲時にきっちり演歌を調べ上げ、ここ近年の主流であった
「カラオケで歌いやすい曲を作る。つまり、一般人が歌える音域・音階などで曲を作る」
方針を採用していたのですが、仕掛け人はそこに問題があるとにらみました。
同じような方向性で作るから曲の画一化を招き、演歌をつまらなくしていると考えたのです。
で、できたのが今までに比べかなり難度の高い曲。
メロディ自体も色々革新的なことをやってたそうですが、ここはさらっと省略。
そんな感じで非常に斬新な曲ができ、それがヒットにつながったとのことです。

ゲストの作曲家・都倉俊一は、JEROを「まるでタイガーウッズのようだ」と表現してました。

秋元順子

還暦でデビューした異色の歌手。
まだ wikipedia にページがありません。
歌手もそうですが、作詞作曲者も異色で、どちらかというとこちらのかたの方がメインです。
元々印刷会社の社長だったそうですが、会社は倒産するは病気で入院するわで、相当不幸な
状態だったところ、ふと演歌が思い浮かんで作ってみたそうです。
それが「マディソン群の恋」という歌。
時間もできたところだし、歌ってくれる人を探してみたのですがなかなか見つからず、
2年間探して見つかったのがクラブ(だと思う)で歌ってた秋元順子だったそうです。
……ここ放送だと「2年間」って一言でさらって流してましたが、2年間ド素人の自分が作った
歌の歌い手を捜し求めるって凄い労力ですよね。これにはかなり衝撃を受けました。

そしてこの二人、自費出版でCDを出すに至ります。
要は同人CDですね。

この後これがヒットしていくのですが、その経緯がまた面白い。
なんと社交ダンスの場から広まっていったそうです。
踊りやすいリズムらしく、曲も良かったのか人気が出て、そして今の人気(といっても私は名前さえも初めて聞いたのですが)につながったとのこと。

作詞家:長く売れる曲を目指して

今のJ-POPの曲は、ダウンロード販売で売れるような曲作りが主流だそうです。
私は携帯でのダウンロードなど全く使わないし、iMS も使ったことないのでよくわからないのですが、今は30秒の試聴が出来て、それを気に入ったらダウンロードして買う、という形式でサービスが展開されてるとのこと。
だから曲作りの人達は、その30秒でいかに気に入られるかに注力するのです。
また、ダウンロード販売だと次から次に曲が飽きられ、消費されていくようになっています。
これはいい傾向ではなく、やはり長く売れる曲を目指さなければならない、というのがテーマ。
ここで一人取り上げられた人がいたのですが、ちょっと忘れてしまいました。
なんでもロングセラーを出した人だそうですが、作詞家が阿久悠だそうで、亡くなる1年前に作ったそうです。
阿久悠曰く、
「今の曲は場面がない」
とのこと。感情とかそういう精神的な部分は多いけれど、それがどんな場面を歌っているのかがわからない。
……まあ確かに、いくつか曲を思い出してそこから想起される風景を思い浮かべれば、大抵は電車の中かカラオケボックスですもんね。
その後色々ありましたが忘れてしまったので省略。
締めで都倉俊一がこんなことを言ってました。
(細かいところはうろ覚え)
「シンガーソングライターは詞・曲を自分のために作って歌う。だから聴く人は『その人』を聴く。
作詞家は違う。いつもいい曲・いい歌い手を求めてる。
どっちがいいというわけではないけど、もっと多様性があっていい」

感想

JEROの話は、常識・定石というものはいつでも疑ってかかるべしということをあらためて教えてくれます。
「お決まりのパターン」は、結局のところそこそこの成果しか出ないんですよね。
「それは非常識だよ」「筋が違うよ」などというアドバイスは、まあもちろんちゃんと聞く必要もあるにはありますが、そればかりを信じては思い切ったことはできませんよね。
ちょっと思い出しましたが、都倉俊一は「今の成功は今まで演歌で地道にやってきた人達のおかげ」という話もしてました。
常識破りを出来るのは、常識の世界を積み上げてきた人達のお陰でもあるのですよね。
……なんかこう書くと皮肉っぽく聞こえてしまってよろしくないですが、そういう悪い意味ではなく、やはりJ-POPの流行の陰で地道に演歌という世界を築き続けてきた人はすごいと思います。継続は力。
秋元順子の作詞作曲者の話もまた継続は力ということを教えてくれます。趣味で作った歌なんてそこらのカラオケ好きなおばさんにでも頼めばよかろうに、2年間もいい歌い手を探し続けるあのパワーには感服するばかりです。
また、秋元順子は、「人は何歳からでもスタートできる」ということを証明してくれる一人となってくれました。
以前未踏ソフトのイベントでも50過ぎてから未踏に応募して通り、定年(早期定年?)退職の後起業した人が講演していました。
これもある意味常識破りの一つなのでしょう。
さて「継続」の話に戻りますが、ロングセラーを作るというのは「自分が継続する」のではなく「他人に(買うことを)継続させる」という点で特に大変なものでしょう。
曲に限らず、世の中のありとあらゆるモノを見回しても、ロングセラーというのは本の僅かです。
しかし、この濁流のような時間の流れに耐え抜いた作品は素晴らしいものが多いですよね。
最近私は古くからの名著を読むことが多くなりましたが、この年になってようやく古典の面白さがわかりました。
都倉俊一の言うように、消費が前提の曲を大量生産するよりも長い時を生き延びるだけの力を込めた作品を輩出する努力をしていった方が、結果的に良い曲がたくさん生まれるのでしょうね。
ソフトウェアも同じかもしれません。一時の流行に任せた作品を作るより、長く使われることを考えて製作していかないといけないのかもしれません。


大分長くなりましたが、もう一つ私が面白いなと思ったのは、この「演歌の逆襲」を放送したのが NHK であるということです。
NHK は、この演歌のようなものなのではないかと思うのですよね。
近年かなりの巻き返しを達成しているという話を聞きますし(詳細は知りませんが)、お笑いとバラエティだけの画一的な民放よりよほど新しいことに挑戦しているイメージがあります。
……テレビは大して見ないのであくまでイメージ、なのですけどね。


それにしても久しぶりに書いた割にはやたら長くなりました。
もし最後まで読んでくれた人がいましたら、ありがとう、お疲れ様。