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第35回The Economist読む隊感想

http://ecotai.g.hatena.ne.jp/keyword/%5B%E7%AC%AC35%E5%9B%9E%5D
基本情報は上記参照。

Invisible but indispensable

http://www.economist.com/displayStory.cfm?story_id=14793432

先々週号の The Economist に、日本の企業に関する面白い記事がありました。今日はこの記事についてお話をいたします。

「Invisible but indispensable」、日本語にすると「不可視でも不可欠」といったところでしょうか。今回の話のメインとなる日本の中堅企業を指していると同時に、もう一つのメインの話である半導体の暗喩でもあります。The Economist はこういう言葉遊びをよくやります。

さて、今回の話は日本の中堅企業が様々な技術分野において独占的あるいは寡占的な地位についているという話から始まります。自転車部品でトップシェアを誇るシマノ、世界の半分のファスナーを作るYKK、HDDモーターで世界を席巻する日本電産などなど、多くの有名な中規模日本企業を紹介しています。そして、日本の大手電機メーカーが中国・韓国・台湾のライバル企業に対し苦戦を強いられているのに対し、日本の中堅企業は依然頂点に君臨し続けているという話で一旦例示が締めくくられます。

ここで注目したいのは、「中堅企業」という言葉です。これ、英語の原文でも「chuken kigyo」とローマ字で書いた上で、「strong, medium-sized firms」という注釈が書かれています。日本語ではミディアムサイズという意味しか残っていませんが、こうやって母国語が他国語の外来語となるのを見るのは面白いですね。

話を戻します。この記事のメイントピックは、半導体の製造工程における日本企業の役割です。半導体製造工程における4つのプロセスの全ての分野で日本企業が部品を提供し、3つの分野で装置を提供しています。ハイテク製品の多くはコモディティ化していきましたが、そうならなかった一部の分野では高い参入障壁があるために未だ高い利幅を得ています。

さらに記事では、こうしたハイテクチャンピオン企業の特徴についていくつか説明しています。まず一つは、研究開発への多額の投資と日本での集約。もう一つは、サプライチェーンを自前で持ったり、製品を作る機械を内製したりする垂直統合への強い関心などです。

この記事で特に力点を置かれて説明されている特徴の一つとして、顧客との一体化というものがあります。顧客との長年に渡る密接な協力関係によって、高度にカスタマイズされた製品を顧客に提供することができるようになります。

もう一つは、暗黙知の重視です。特許やマニュアルからは読み取れない知識は、競合他社にとっての参入障壁となります。この記事では、これこそ専門性の高い日本のハイテク企業が他の業界で崩れつつある終身雇用制度を保持し続けようとしたり、M&Aを嫌う原因であると説明します。

とはいえ、次の危機はすぐそこまで迫っています。かつて米国から仕入れた知識を元に発展した日本は、同様のやり方で中国・韓国・台湾に追い上げられています。低コストの波により、利益率は下がっていきます。そしてこれが研究開発費の減少につながり、諸外国により一層競争の余地を与えてしまうのです。

また、自分達の成長のカギとなっていた数々の特徴はそのまま阻害要因となります。垂直統合は自社の得意でない分野にリソースを分散してしまうし、終身雇用は会社の柔軟性を損ない新しいアイデアの創出を妨げます。

既に生産量では中国に抜かれ、一部のハイテク分野ではシェアを失いつつあります。日本のオーバースペックな製品は「質より安さ」を求める国では歓迎されません。事実、携帯電話はその高い品質にも関らず海外でのシェアはありません。

さらに、日本のクローズドな文化をオープン化によって破った事例があります。キヤノンとニコンという、巨大な半導体製造装置のサプライヤに対し、オランダの会社ASMLは製品の各モジュールをそれぞれの専門企業に外注することによってこれを打ち破りました。

また、トラブル発生時も、顧客に対し完全な秘密主義を貫く日本企業に対し、顧客への問題点の開示を行うなど、オープン化を推し進めているという話もあります。

私のようにオープンソースの世界で生き、マスコラボレーションの力を知った人間にとって、これは非常に興味深い事例です。企業対企業ではありますが、非常に優れた一個体よりも集団の力で上回ることができるということが、ここでも示されたわけです。

このキヤノンとニコンの事例は日本企業に危機感を与え、オープン化の重要性認識するきっかけをもたらしたようです。日本は産官連携して、技術トップの地位を必死に守ろうとしています。

この記事の最後は、こう締めくくられています。"The lesson is clear: once the expertise is lost, it is hard to regain"、つまり、教訓は明らかである。一旦専門性を失えば、それを取り戻すことは困難である、ということですね。

さて、記事の説明はここまでです。私が特に興味深いと感じた部分は、先ほども少し話しましたがクローズド対オープンの事例ですね。とはいえ、オープンであることがもたらすメリットは確かに大きいのですが、かつて合気道を学んだ身としては暗黙知というものも依然として無視できないものです。実際、上手の仕事を目の前で見ることでその思考のプロセスを覗くことができますし、これが私にとって大きな力となっているのは間違いありません。かつて和魂洋才という言葉があったように、上手く複数のアプローチのいいとこどりができるといいですね。

この記事はJBPressに日本語訳が出てますので、興味がある人はそちらを読んでみてください。このブログでもこちらの翻訳版を参考にさせていただきました。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/2110