オープンコレクターに入社して3ヶ月が経った

f:id:shiumachi:20200701012420j:plain

Photo by Zoltan Tasi on Unsplash

shiumachi.hatenablog.com

オープンコレクターに入社してからあっという間に3ヶ月が経ちました。

ここでの仕事は、とにかく密度が濃いです。ミーティングは週2-3回ある程度で、余計な割り込みが一切なくひたすら技術に関係する仕事だけに取り組んでいます。

こんなにミーティングがないのはClouderaの最初の1-2年のときくらいかもしれません。


仕事は案件対応をやっています。HadoopNLPなど、自分がClouderaやLuminosoで得た技術をフルに使う仕事をやっています。

二年前、別の分野で一から始めたいと思ってClouderaを飛び出しましたが、結局仕事になるのは自分が培ってきた技術や知識なので、なかなかそこから逃れるのは難しいですね。

shiumachi.hatenablog.com

データ基盤と機械学習/NLPの知識を両方持っているというのはそれなりに希少価値があるはずなので、このあたりを自分の得意分野として伸ばしていければいいかなと考えています。


とはいえ、いざ案件対応すると、今まで習得した自分の知識だけでは全然足りないということを実感します。

ベンダーにいた頃に想定する環境は、いわば理想的なきれいな環境でした。実案件においては、お客様のビジネス要件や様々な制約を伴う環境と直面します。

あるべき論は通用せず、目の前にある様々な条件を考慮した上で課題を解決していく必要が出てきます。

正論の知識だけでは全く通用しない、実戦の技術というものが要求される中で、自分の実力不足を日々痛感しています。


仕事の負荷としては全く高くなく、非常に快適です。

10年ぶりに深夜・早朝のメール・チャット・ミーティングなどに悩まされない生活を過ごしていますが、これは精神衛生上とてもいいです。規則正しい生活になるだけで身体の負担が全く違います。

通勤も全くないので、仕事量の割には疲労が少なく、かなり健全な生活サイクルになっています。


英語を日常的に書かなくなったというのも大きな変化です。

海外とやりとりすることもあるので全くないというわけではないのですが、基本的には日本語だけで仕事ができています。

とはいえ、あまり自分にとってはどちらの言語使ってもそんなに変わらないので体感的にはあまり気になりません。

前回の記事でも書いたように、社長の @moriyoshit をはじめ、オープンコレクターのメンバーは技術力が非常に高く、一緒に仕事して楽しい人達ばかりです。

いい人達と一緒に仕事をするということの方が、言語的な問題よりも大きいとあらためて実感します。

shiumachi.hatenablog.com


自分の実力はまだまだですが、さらに知識と技術を身につけていき、新しい取り組みを色々とこなしていきたいと考えています。

在宅勤務で自宅トレーニングを長く続けるための7つのコツ

2021年版のFreeleticsガイドができました!この記事より新しいので、そちらを参照してください。

shiumachi.hatenablog.com

最近在宅勤務する人が増えてジムが利用禁止になったからか、 AIパーソナルトレーナーアプリのFreeleticsを始める仲間が増えてきました…が、どうも皆さんきついのか長続きしないようです。

6割近くの人がコロナ太りしたというニュースもあり、在宅勤務において継続的な運動は必須の習慣となっています。

www3.nhk.or.jp


そこで、Freeleticsを1年3ヶ月続けた経験から、自宅トレーニングを長く続けるコツをいくつか紹介したいと思います。


f:id:shiumachi:20200609005030p:plain

大原則: 長続きさせることを目的にする!

レーニングが長く続かないのは、「一日でも早く痩せなきゃ」とか、「以前よりももっと高い負荷でやらなきゃ」とか、キツい目的を掲げるから逆に尻込みしてしまうというのも原因の一つです。

まずそういうのを一旦おいて、とにかく長続きさせるということだけ考えてください。重要なのは、「長続きさせれば楽でもいい」ということです。

ちょっとこの辺はFreeleticsの思想と外れますが、重要なのは習慣化であり、習慣化したあとにゆっくり負荷を上げればいいと私は思ってます。

今日スクワット100回やって2日休むよりも、3日間毎日50回やる方が結果的にたくさんの運動を行っています。

習慣化することだけに注力しましょう。

コツ1: 疲れてるときは休むことを恐れない

1つ目の話を踏まえた上で、疲れたらきっちり休むというのを心がけましょう。

オンライン飲み会のあとで寝不足だったり二日酔いだったりするときは無理してやるのをやめましょう。

その代わり、その日のトレーニングは「体調を整えて、早く寝る」ことだと気持ちを切り替えます。

体調を万全に整えた方がやる気が出ます。

コツ2: ブランク明けのトレーニングは軽めに

サボったりするとどうしても今までのトレーニングがきつく感じて、「今日はやめとこう…」と尻ごみしてそのままトレーニングをやめてしまいます。

今までの進捗が後退するのはどうしても抵抗を感じてしまいます。

勇気を出して、しばらくはとにかく軽めなものをやるだけにしましょう。

レーニングを再開したというのはそれだけですごいことです。喜びましょう!

幸い、最新のFreeleticsではその日の強度を変更する機能がついているので、勇気を出して負荷を軽くしましょう。

f:id:shiumachi:20200609003113p:plain

コツ3: ウォーミングアップとクールダウンはサボらない

他の人に話を聞くと、結構みんなカジュアルにウォーミングアップとクールダウンをサボっているので驚きます。

ウォーミングアップとクールダウンは絶対にやりましょう。これやるだけで疲労が全然違うし怪我のリスクも下がります。あとはトレーニングのやる気を出すための儀式的な意味もあります。

f:id:shiumachi:20200609003442p:plain

コツ4: トレーニングウェアを着る

前は普通のTシャツをそのまま使っていたのですが、やっぱりトレーニングウェアを用意した方が気分的な意味でトレーニングをやる気になります。

安いものでいいのであった方がいいでしょう。

コツ5: フィットネスマットを敷く

怪我防止や防音効果も重要ですが、トレーニングウェアと同様、やはり「これからトレーニングをやる」という気持ちを高めるためにもあるに越したことはないです。

自重トレーニングはかなり負荷がかかるので、可能な限り厚めのマットを選んでおくといいでしょう。


コツ6: トレーニング用スマートウォッチをつける(オプション)

それなりの値段がするので「できればあった方がいい」程度ですが、トレーニング中に心拍数を見て運動強度を見たり、心拍数記録から運動状況を把握するのに使うことはできます。

私は Fitbitしか持っていないのですが、Freeleticsのスマートウォッチ連携はApple Watchにしか対応していません。

お金に余裕があるとか、すでにApple Watchを持っているならそれを使うべきですが、「これから運動を始める人のやる気を高める」という目的で進めるにはあまりに高いんですよねApple Watch……。

個人的には、今何もスマートウォッチ持っていないなら、3-5万するApple Watchを買うよりは最安1万弱で変えるFitbitの方がいいと思います。私は上位機種のChargeを使ってますが、それでも1万円台です。

コツ7: 過度な食制限と並行でやらない

運動でつらい思いをしながら、糖質制限とか無茶な食制限をすると、凄まじいストレスがかかります。

ただでさえ自宅から出れなくてストレスが溜まっている状況でこんなことしたらそれだけで心身ともに病気になってしまいます。

食制限しなくても運動だけで6kg痩せたので、食事は気にせず食べた方がいいです。

shiumachi.hatenablog.com

余談ですが、今年に入ってからほぼ自宅から出ていませんしお酒も甘いものも普通に飲み食いしてますが、さらに3kgほど痩せました。

まとめ

レーニングを始めようというときはキツいトレーニングも頑張ろうという気持ちが高くてある程度は出来ますが、それだけでは長続きしません。

とにかく、常に「どうすれば習慣化できるか」「どうすればサボっても復帰できるか」を考えながらやることが重要だと思います。

健康的な在宅ライフを!

Freeleticsの購入方法

Freeleticsは有料のアプリです。年間1万円のサブスクリプションです。
3ヶ月プランや6ヶ月プランもあるので、続ける自信がないという人はこちらを購入してもいいです。14日間は返金に応じてくれるので、試しに買ってみて、合わなかったら返金しましょう。

Freeleticsを始めてみたいという人は、下記のリンクから購入すれば20%オフで買えます。 Coach と Nutrition (食生活改善)の二種類が出てきますが、Nutrition は自分は試していません。運動だけなら Coach で十分と思いますが、誰か Nutrition を試した人がいたら感想教えてください。

https://www.freeletics.com/r/124871187

とびきりのハッカーと同じチームで仕事をすることは福利厚生である

先日、社長の moriyoshi と一緒にある案件を行っていました。
リリース直前の前夜、どうしても現在のライブラリでは技術的に不可能な問題が発覚しました。
入社して一ヶ月も経てば、仕事の場でmoriyoshiがどう動くのか大体わかるようになります。

「じゃあ作るしかないな」
「できそう?」

moriyoshiは答えません。次の答えはもう分かっていたので、私はmoriyoshiが作成しているであろうプラグインを組み込むことを想定したテストコードとそのデプロイ手順を確認します。

私がテストコードとデプロイの準備を整えた頃、moriyoshiはSlackに再び現れました。

「できた」

予想通りの答えでした。私はすぐさまプラグインリポジトリに取り込み、テストを実行し、デプロイ作業を実施しました。

~~~

最近は、特に外資系ではどの会社も様々な福利厚生を用意しています。

Googleランチ育児休暇は有名ですし、マイクロソフト新型コロナウィルスに対応するため全従業員に12週間の有給休暇を付与するなど、世界に名だたる大企業は争うように手厚い福利厚生を提供することで人材の獲得に必死になっています。

しかし、どのような会社も、とびきりのハッカーと同じチームで仕事ができることを福利厚生として提供してはいません。

もちろん、上記の会社には優秀な社員がたくさんいるのは知っていますし、オープンコレクターだって別にそんなことを福利厚生として定義しているわけではありません。

ですが、金銭以外の報酬によって社員のロイヤリティを高めることが福利厚生であるならば、moriyoshiと一緒に仕事することは間違いなく自分が今まで経験した中で最高の福利厚生です。


オープンコレクターは、Joel Spolsky がソフトウェア開発者採用ガイドの中で言うところの、「頭が良く、物事を成し遂げる(p.95)」の集団です。オープンコレクターのメンバーは誰もが高い技術力とチーム同士の協力を惜しまない、本当に優秀なエンジニアの集まりです。

ソフトウェア開発者採用ガイド

ソフトウェア開発者採用ガイド

  • 作者:Joel Spolsky
  • 発売日: 2008/03/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

その中でも社長のmoriyoshiは正真正銘のハッカーであり、見栄えのいいパワポ資料を作ったり、世界を変える壮大な夢を描いて万人にそれを語ったりする代わりにコードを書くことで価値を示す、まさに「ハッカーと画家」から飛び出してきたような、とびきりのハッカーです。

一流のハッカーのそばにいて一緒に仕事をしながら学ぶことができるという福利厚生は、どんなにお金を積んでも買えるものではありません。


このような恵まれた環境で働くということに幸せを感じるとともに、いつか自分もそう思われるよう、努力を重ねていきたいと思っています。

TEAM OF TEAMS: 米軍による、最新ITを駆使した21世紀の組織変革戦略


この本は、イラクアフガニスタンで米軍の司令官を務めた将軍が記した、複雑で予測不可能な社会に対応するための、21世紀の組織論を書いた本です。

20世紀においては、事業部制に代表されるような、きれいに組織化され、作業を分割され、個人や部門が特定の作業に集中できるようにする効率化された組織が大成功を収めました。その集大成とも言えるものが、イラクアフガニスタンに派遣された米軍でしたが、装備や練度で大幅に劣るはずのAQI(=アルカイダ)に翻弄されていきます。その中で著者は、20世紀型のマネジメントに原因があると気づき、組織の構造の根本的な改革に取り組みます。そのときに着目したのが「チーム」という存在でした。

チーム単位の組織論は20世紀においても十分な進化を遂げていました。チームは互いを信頼し、全ての情報を透明性を持って共有し、硬直化した意思決定プロセスを捨てて誰もがアイデアを出していく、そのようなチームが成功を収めていました。その代表例は航空機業界におけるCRM(クルーリソースマネジメント)米国海軍のNavy SEALs などです。

しかし、当時の米軍では、チームレベルでは協調ができていても、組織全体は完全な縦割りで、組織の壁でコミュニケーションが遮られていました。「自分のチームさえよければ他のチームはどうでもいい」という感情は、チーム間の競争を生み、組織全体の目的よりも優先されてしまうこともあります。著者は、組織全体としてチームと同様の一体感を作るには、「チームの中のチーム(TEAM OF TEAMS)」が必要だと考えるようになりました。

ネイビーシールズのような、一体感を持ったチームを、部門横断でいくつも作ることで、全員が互いの顔を知らなくても、2-3ホップでチームとして繋がれるようなネットワークを組める、というのがアイデアの骨子です。では、それをどう実現するか?著者がそのときに採用した三つの施策が、情報統制の撤廃による透明性の向上、要員交換プログラムによる横の結束の構築、そして徹底的な権限委譲でした。

米軍では、オペレーションアンドインフォメーション状況報告、通称O&Iと呼ばれる会議が存在します。一般企業でいう進捗報告会議です。2003年の米国において著者が実施したことは、セキュアなビデオ会議の導入でした。

最先端の軍の装備と言われたら普通は兵器を想像するはずで、スカイプの拡大版だとは思わないだろう。(p.289)


Skype(最近ではZoomの方が一般的でしょうが)のようなビデオ会議ツールを、著者ははっきりと「兵器」と言っています。それだけではなく、「チャットルーム、ウェブポータル、そして電子メール(p.290)」、要するに今でいうところのグループウェアを導入していったのです。2020年の今となってはMSやG Suiteを導入するのは当たり前ですが、当時はまだ2003年です。その時代に、著者はグループウェアを組織変革のための「兵器」とみなしていたのです。

そして、著者はこの進捗会議を全員参加にするだけでなく、どんなに極秘な情報であっても全て公開情報としてこの会議で取り上げました。米軍のようなミッションクリティカルな領域においては情報を秘匿するのが常識でしたが、著者は共有する方がリスクよりもメリットがあると判断しました。

役に立つものは目に見えないが、漏えい事件は新聞のトップ記事になる。そのせいで、判断を誤ってはならない。…経験上確かなのは、情報を共有すれば膨大な数の命を救えるということだ。(p.300-301)


二つ目の施策は、要員交換プログラムでした。チーム間で人員を転属させる仕組みなのですが、部隊からは強い反発を受けました。長年の訓練で築き上げた強い結束を崩して他のチームと組むなど言語道断といった感じです。しかし、いざ命令が下りると、各隊は部隊代表としてエースを送り込み始めます。こうしたエースは他者との関係を築く才能があることが多く、新たなチームを作り出すことができます。それだけではなく、各チームからの代表がそれぞれのチームとのパイプ役となり、チーム同士の対立を避け、勝利のためのチーム同士の結束が可能となっていきました。

同時に、O&Iもチーム同士の結束に活用していきました。リソース(多くの企業でいうところのヒト・モノ・カネ)の部署間の取り合いはどの組織でもあることですが、このリソース配分会議をO&Iの最中に、すなわち部隊の全員が見ている中で行い始めました。これにより、部隊全員が全体像を把握することができるようになり、勝利を目指すためにリソースを譲るべきかどうかを判断できるようになりました。

最後の施策が、権限の委譲でした。部隊の司令官だった著者は、部下から作戦の説明を聞いて、それに対して承認する(日本で言うところのハンコを押す)だけの役割が多かったのですが、一瞬のチャンスを逃さないためにはそれは不要だと考えるようになりました。

現代の技術を使えば、戦場のあらゆる情報をリアルタイムに指揮官の元に集めることができ、また指揮官の号令は世界中どこにでも一瞬で届けることができます。しかし、それこそが、現場の自律的な活動を阻害する要因であると著者は気づきました。

(あらゆる情報がリアルタイムに集まる環境について)頭のなかに全体像を描くには素晴らしい環境だったが、そのせいで悪夢のような書類仕事と承認手続きが生じ、本当の問題を解決するために使えたはずの時間を奪われてしまった。…今では、最も優秀なリーダーですら、必要とされる判断のスピードと量に追いつけず、組織の下のものに権限を与えざるを得ない(p.364)


そして、著者は個別の作戦の判断をやめて、一連の流れを監督することに徹します。これにより、一ヶ月間の作戦行動を月あたり10-18回から、月あたり300回まで増やすことに成功したのです。

著者は、上記の体験を元に、これからのリーダー像についても論じています。従来型のリーダーは、英雄的リーダーでした。我々はリーダーに対し、高度で戦略的な先見性を求める一方で、些細な問題についても知っていることをリーダーに求め、知らないとなればなぜ知らないのかと追い打ちをかけたりします。しかし、そのようなリーダーはもはや成り立たないと著者は記しています。

リーダーは、自分が複雑な状況を理解し、予測できるような気になってしまう。しかし、変化が早く、相互依存的な環境においては、我々の目が届くスピードより問題が深刻化するスピードの方がずっと早い。(p.387)


ではリーダーは不要なのか?そうではありません。著者は新しいリーダーのあり方をこう記しています。

上に立つ者の役割は、糸を引いて人形を操ることではなくなり、共感によって文化を創造することになったのである。(p.388)

新たな環境でうまく機能するリーダーシップとは、チェスより菜園づくりに似ていると考え始めた。…組織を育て、構造や手続き、ひいてはその文化を改善し、配下の組織が「賢く自立的」に動けるようにする方が効果的なのである。(p.392)

より多くのことを決定する力を持ったまさにそのときに、自分の決断機会を減らさなければならないと気づいたのである。(p.394)


著者は、何を優先すべきかを話し合い、率先して手本を示すことでそれを明確化することで、部隊の関心をそこに集中させることが自分の第一の仕事だと認識しました。イントラネットに伝えたいことを、シンプルに、繰り返し記述し、行動とメッセージがぶれないように気をつけました。若いメンバーの意見は、たとえ知っているようなことが多かったとしても、聞いていたという姿勢を見せ、出来がよくなくても褒めることで、隊員に自信を与えていきました。

また、頭に浮かんだことを声に出して、思考プロセスを共有することで、部隊全体に考えを共有したりもしました。視察中は常に誰かとのコミュニケーションの時間に費やし、自分の考えを共有していきました。

テクノロジーは…従業員の働きぶりを細かく見張るためではなく、チームの一人ひとりにリーダーの姿をみせるために使わなければならない。リーダーは指示を出すよりも、自分の透明性を示さなければならない。これこそ新たなリーダーの理想像である。(p.405)


この本を読み終えたとき、私の脳裏に浮かんだのは、まだ200-300人の頃のClouderaでした。今でも私にとってはあの頃のClouderaが最高の組織だったと信じて疑っていませんが、それはおそらく、この本でいうところの「大きい1つのチーム」だったからだと感じました。創業者のMike Olsonは300人規模になるまで、全社員の最終面接を行っていたのですが、彼はそれが会社の文化を守るのに必要だからと確信していたからだと思っていたのは間違いありません。実際、当時のClouderaは、非常に透明性が高く、部門を超えて連携する、一つのチームとして機能していました。しかし、会社が大きくなってからは、One Clouderaという標語を明記するのに反して、部門ごとの縦割りが進んでいき、以前のような一体感を失っていきました。

唯一の例外はサポートチームで、サポートチームだけが初期のCloudera文化を引き継いだまま大組織化に成功しましたが、この本を読むと、おそらくサポートケースを対処するための部門横断チーム、すなわちTEAM OF TEAMSを作っていくことに成功したからではないかなと思いました。実際、初期の頃のClouderaでは、サポートケースに開発チームやポストセールス、営業などが書き込んでいき、お客様との対応を全員で行っていたのでそうしたTEAM OF TEAMSを作る土壌はあったように思います。

この本に書いてあることが本当に正しいか、まだ私は確信は持てていません。一つは、結局米軍は大統領、あるいは国から目標を与えられていく存在のため、自ら目標を作っていかなければいけない組織においては成り立たないのではないかという疑念があります。もう一つは、米軍は当然優秀で士気が高い精鋭集団のため、そこまで優秀ではなく士気も高くない組織でこの理屈が成り立つのかという懸念です。しかし、私が過去の経験から抱いた疑問にいくつかの解答案を示しているものであり、その意味でこの本は大きな価値があると感じました。

本書にもある通り、この本はノウハウ本のような「これをすればうまくいく」といった単純な内容ではありませんが、組織論としては面白い内容なので、そういうのに興味がある人は読んで損はないと思います。

ただ、前半250ページくらいは従来の事例の話が多く、組織論をある程度かじっている人は前半は読み飛ばして、O&Iの話あたりから読み始めればいいと思います。


(2020/04/27 追記: 細かいtypoの修正)

高い予測精度を有する専門家の特徴

今年の初め、新型コロナウィルスがこれほど世界的に流行するなど、私は全く想像していませんでした。しかし、このような事態になって、あらためて「超予測力」に書いてあったことが正しかったと実感しています。

超予測力の書評については、去年私が記事を書いているので、そちらも是非読んでみてください。

shiumachi.hatenablog.com

その記事の後半から一部を引用します。

2001年4月11日、当時の米国国務長官ドナルド・ラムズフェルドが、ジョージ・W・ブッシュ大統領とディック・チェイニー副大統領宛に、リントン・ウェルズ博士が執筆した、1900年から2000年までの、10年ごとの戦略的状況の分析メモを送付しました。

その内容は、10年ごとの戦略分析は「全て」的外れであるということを示していました。例えば、1930年の国防計画基準には「今後10年は戦争はしない」と記されていますが、実際には9年後に世界大戦が勃発しています。1960年の時点では、まだ米国国民の大半はベトナムという国を知らず、1990年にはインターネットという概念を国民の大半が知らない、という状態でした。
「2010年の状況は、我々の想定しているものとは全く異なるものだから、それを前提にして計画を立てるべき」とそのメモは締めくくられていました。

そしてその半年後、911が発生したのです。

もし、米国政府で今も同様のメモが更新されているのであれば、この新型コロナウィルスパンデミックも末尾に書き足されていることでしょう。

未来を予測できないからこそ、予測するというのが本書の目的の一つとなっています。


予測のテクニックは思った以上に難しく、我々一般人が真似をすることはかなり困難です。

しかし、他者の予測を評価する、すなわち予測リテラシーについてはある程度学ぶことができます。

本記事では、「超予測力」の3章を主に引用し、専門家達の予測の評価方法を紹介していきます。

デタラメ以下の専門家達

本書の3章では、専門家達の予測能力を図る実験を行っています。実験の内容を簡単に説明すると、政治に関するいくつかの予測を専門家達に行ってもらい、一定時間経過したあとにその結果を検証するというものです。

その結果に基づき、専門家達をグループ1(デタラメ以下の予測力)、グループ2(デタラメよりマシ)に分類しました。

グループ1には以下のような特徴がありました。

  • 自らの思想信条を中心に思考する。思想信条の内容そのものは無関係
  • 複雑な問題をお気に入りの因果関係のテンプレートに押し込もうとする
  • テンプレートにそぐわないものはノイズとして捨てる
  • 分析結果は非常に明快
  • 「そのうえ」「しかも」といった言葉を連発し、自分の主張が正しく他の主張が間違っている理由を並べ立てる
  • 極端に自信にあふれ、さまざまな事象について「起こり得ない」「確実」などと言い切る傾向が高い
  • 自らの結論を固く信じ、予測が明らかに誤っていることがわかっても、なかなか考えを変えようとしない

グループ1の思想信条は、予測の正確さを高めるどころかむしろ歪めていました。また、グループ1は、多くの情報を集めても、全てを色眼鏡で見るために活用できなませんでした。

しかし、メディアにおいてはグループ1は成功しています。メディアや一般大衆は、シンプルで好きのない明快なストーリーを好むので、自信にあふれ、確実であると言い切るグループ1は人気が高くなるのです。

(2020/04/20 追記) ここでいうメディアとは、旧来のマスメディア、すなわち、テレビや新聞などを主体に考えていることに注意してください。本文には明記されていませんが、個人が直接SNSで発信することは含まれておりません。

デタラメよりも予測精度の高い専門家達

一方、グループ2には以下のような特徴がありました。

  • 現実的
  • 直面した問題に応じてさまざまな分析ツールを駆使
  • できるだけ多くの情報源から、できるだけ多くの情報を集めようとする
  • 思考するときに頭の中のギアを頻繁に切り替える
  • 「しかし」「だが」「とはいえ」「それに対して」といった転換語が目立つ
  • 確実性ではなく、可能性や確率に言及する
  • グループ1に比べ、自らの誤りを認め、考えを変える傾向がある

グループ2は、メディアでは成功しません。グループ1ほど自信がなく、何かが確実あるいは不可能と言うことを避けます。「かもしれない」といったぼんやりとした表現を選ぶだけでなく、1つの問題をさまざまな視点から見るので、その説明は「しかし」や「一方」が多く、難解です。

聴衆は不確実性を好まないので、グループ2はメディア人気が低くなる傾向があるのです。

まとめ

今回のパンデミックにおいて様々な専門家達が意見を述べていて、どの意見を信じたらいいかは難しいですが、以下の言葉は参考になるかもしれません。

知名度と正確さには逆相関が見られたのだ。有名な専門家ほど、その予測の正確さは低かった。(p.109)

(2020/04/20 追記) ここでいう「有名」とは、テレビや新聞などの旧来型マスメディアに頻繁に登場する人だと考えてください。


当然ながらこの言葉は普遍の法則ではありません。しかし、何度もメディアに登場し、明確に「こうなる」と断言するような専門家の意見については、多少の警戒心を持って接しても損はないでしょう。


(2020/04/20 追記) タイトルが本文の内容を反映していないとの指摘があったため、タイトルを修正しました。

インビクタス「頭に訴えず、心に訴える」

昨年のラグビーワールドカップが盛り上がってた頃に、昔からのラグビーファンだった d1ce_ に勧められたので読みました。

インビクタスは映画の方が有名ですが、d1ce_ からは本の方がお勧めということなので本を読んでみました。映画は未視聴です。

インビクタス 負けざる者たち

インビクタス 負けざる者たち

優勝を手にした南アフリカ代表、スプリングボクスと、南アフリカの英雄、ネルソン・マンデラの話なのですが、話の中心はマンデラであり、スプリングボクスはその理想の実現を目指す実行部隊という位置づけの話です。

恥ずかしながらアパルトヘイトについての自分の理解は非常に浅く、「黒人に対する人種差別政策で、マンデラがそれを廃止した」くらいの知識しかありませんでした。しかし、本書を読むことで、当然ながらそんな単純な話ではありませんでした。

マンデラが政権を獲得するまでの苦難、そして、単に法律だけの話ではなく、白人も黒人も、心から一つにまとまるための道のり、そしてそのキーファクターとしてラグビースプリングボクスがどのように関わっていったかが本書で描かれています。

本書を通して特に印象深かったのが、差別側、特権階級側である白人コミュニティが抱く、被差別側、つまり黒人コミュニティに対する恐怖と、一方で自分達が世界から侮蔑の目で観られているということについての劣等感でした。

「差別は悪いことである」とは世界の誰もが教わる常識ですが、その差別をしている人たちもまた人間であるということは忘れがちです。悪意を持って差別している人ももちろんいるでしょうが、被差別層に復讐されるかもしれないといった恐怖から現状維持を求める者もいれば、単純に政治に対して無関心だったり、日々の生活に手一杯だったり(白人層にも低所得者層はたくさんいる)、変化に対して抵抗する人達の理由は様々です。

一方で黒人コミュニティも、白人に対する憎悪であふれている人も大勢いて、過激な行動に走ってでも自由を勝ち取るという意志を持つものも大勢います。

そんな黒人コミュニティの代表者であるマンデラは、27年もの間投獄されるという想像を絶する苦痛の中、憎悪に飲まれるのではなく、白人コミュニティを取り込んでいく上での黒人の解放を目指すという平和的な手段を選んでいきます。

マンデラは、類まれな魅力と会話術によって、収監中であっても看守や上司から、はては国家情報局長までを味方につけていき、最終的には大統領までも説得していって、とうとう釈放の許可をもらうことに成功します。黒人コミュニティからは熱狂的に、白人コミュニティからは不信と不満を持って迎えられたマンデラは、その後も地道な演説活動と要人への交渉を続け、最終的には2/3弱の投票を獲得して選挙に勝利します。しかし、白人右翼の40-50%は選挙へ行かず、それどころか、選挙の前週には空港などでテロを敢行し、21名を殺害するという凶行に走りました。マンデラは、白人コミュニティとさらに融和するべく、苦心することになります。一方で、白人コミュニティも、マンデラを擁立したはいいものの、本当に黒人コミュニティは復讐しないのか、その不信の念を拭い去ることはできていませんでした。

一九九四年の南アフリカは、歴史、文化、人種その他多くの面で、完全に分離した国でした。交渉、演説、制度の改正、これらをいくら積み重ねても、それだけで『南アフリカ人をつくること』はできなかった。国民の心を一つにする、なにかほかのものが必要でした。(p199-200)

そして、民族融和の手段として、ラグビーが選ばれたのです。

今でこそラグビー南アフリカの国技として世界的に知られてはいますが、当時のラグビーはあくまで白人コミュニティのものでした。黒人コミュニティにとって、スプリングボクスは差別の象徴であり、憎き白人の象徴でした。ラグビーそのものを嫌悪する人はもちろん、ラグビーを応援するときはスプリングボクスの対戦相手を応援することが当たり前でした。

ラグビーが白人コミュニティのものであることを象徴的に示す一例は、国歌と国旗です。当時の国歌だった「ディ・ステム」は、植民地開拓をした白人たちの歌であり、黒人コミュニティにとっては差別の象徴でした。ラグビーの国際試合では、黒人コミュニティからの要請にも関わらず、古い国旗が翻り、「ディ・ステム」が歌われ、白人コミュニティの抵抗を象徴する存在となっていました。

黒人コミュニティには、「ンコシ・シケレリ」という非公式の国歌がありました。多くの黒人国民は、この歌を国歌として制定し、「ディ・ステム」を不要としようとしましたが、マンデラは断固としてそれに反対します。

「みなさんが軽く扱った歌には、多くの国民の思いが詰まっています。…みなさんが署名ひとつで崩そうとしたのは、我々が築こうとしているものの、かけがえのない、唯一の土台 ―― 和解です」 (p.187)

最終的に、マンデラの案である、「ディ・ステム」と「ンコシ・シケレリ」を二曲続けて演奏するという案が採用されることになりました。

このときにマンデラが同時に言ったのが、白人コミュニティを味方につけるアドバイスでした。それは、たとえ数語でもいいので白人コミュニティの言葉を使って話しかけるというものでした。このときに、タイトルにある「頭に訴えかけてはいけません、心に訴えるのです」と言い残しています。

このマンデラの意志を理解し、実行のための強い意志を固めていったのが、スプリングボクスでした。黒人コミュニティの標準語であるコーサ語を学び、「ンコシ・シケレリ」を歌う練習も何度も重ね、自分達に課せられた使命、すなわち「国を一つにする」という使命を達成するために、必ず試合に勝利しなければいけないというプレッシャーの中、大会を勝ち抜いていきました。そして、ついに白人コミュニティと黒人コミュニティが一つとなり、あたらしい一つの国としてスプリングボクスを応援し、そしてチームは見事優勝していったのです。

この物語の全体を通して感じたことは、民族融和を目指すマンデラの根気、優しさ、強さでした。対立する2つのコミュニティを融和させるというのは並大抵の難しさではなく、単なる八方美人で終わってしまうことも少なくないでしょう。しかしマンデラは、国歌の選定を始め、必ず通すべきと思った意見は静かに、しかし確実に主張をしています。このとき、「相手の立場もわかってやってくれ」といったような妥協を促す説得を全くしていないというところも驚きでした。黒人はもちろん、白人に対しても理解を示し、いずれのコミュニティに対しても望む結果となるよう最大限の努力を続けていました。人種を超えた、南アフリカ国民を信じ続け、そして国民がそれに応えていったのです。

世間は、コミュニティの対立、個人の対立で溢れかえっています。自分が対立の当事者になることもあれば、対立を仲裁する立場に立たざるをえない場合もあるでしょう。片方に妥協を促すというのはよく行われる手法であり、マンデラと同じアプローチを取れる人は多くありません。しかし、「相手を理解する努力をし、相手の罪を許し、相手を尊重する」という彼が持っていたビジョンは、多くのこうした揉め事において、常に心に留めておきたいものだと感じました。口で言うのはたやすいですが……

株式会社オープンコレクターに転職しました

2020年4月6日付で、株式会社オープンコレクターのシステムアーキテクトとして勤務を開始しました。
https://open-c.jp/

この会社は、PythonやGo、React Native などの技術を中心として、認証基盤や決済システム、大規模データ処理アプリケーションやチャットボットアプリケーションなどについて、フロントエンドからバックエンドまでの幅広い開発、アーキテクチャ設計からシステムコンサルティング、さらにはCTOレベルの戦略的な技術コンサルティングまでをカバーする、少数精鋭の技術者集団です。
フィンテック関連企業でのプロジェクトを中心に、製造業、小売業、インターネットサービス業など、幅広い業界で実績を持っています。

オープンコレクターに所属するメンバーは、一流のエンジニアばかりです。

会社代表のmoriyoshiは、上記の技術を始めとして、文字通りあらゆるレイヤーの技術に精通した賢者のような存在です。
https://github.com/moriyoshi

Djangoで有名なtokibitoは、現在ObotAIのCTOとしても働いていて、いち技術者にとどまらない活躍をしています。
https://employment.en-japan.com/engineerhub/entry/2020/01/30/103000

Pythonのパッケージングで知らない人はいないであろうaodagもオープンコレクターの一員です。
https://www.slideshare.net/aodag/presentations

私よりひと足早く入社したwozozoは、フィンテック系のフロントエンドエキスパートです。
https://twitter.com/wozozo

このような錚々たるメンバーの末席に加わることは恐縮ではありますが、彼らに恥じない仕事ができるよう努力したいと思います。

特に担当があるわけではありませんが、得意分野である大規模データ基盤の設計やコンサルティング、データ分析や自然言語処理系のアプリケーションの開発などのプロジェクトを主に担当することになると思います。
今日から早速Hadoopの案件が始まります。
Hadoopコミュニティの皆様、思ったより早く戻ってきました。またよろしくお願いします。

お仕事のご相談は以下のサイトのお問い合わせフォームをご利用ください。
https://www.open-c.jp/contact