今日のLinus・その11:Linusのリーダー論

優しい独裁者だって?
いや、ぼくはただ怠け者なだけだ。

(それがぼくには楽しかったから、p256)

優秀で怠惰な者は司令官にせよ、
優秀で勤勉なものは参謀にせよ、
愚鈍で勤勉なものは兵士にせよ……
とはよく言ったものですが、この言葉に当てはめる限り
Linus はまさにリーダーの鑑ですね。

同じような機能を開発した人が二人いるとき、Linus
あるときは両方承認し、あるときは両方拒絶したりします。
そうして、後は自然の流れに任せるのです。
つまり、片方が淘汰されたり、あるいは拒絶されて開発が断念されたりするわけです。
そうして「強い」者が生き残る。
まあ現実と違うところは、「死」がないことですけどね。
現にLinuxのカーネル開発では、現状既に勝敗が決したであろう実装の類似物を、
コツコツと作り続けている人もいます。
いつか返り咲くこともあるかもしれません。

ところが、自分自身の考えを持つ者もいる。
「いや、ぼくは同じ道は行かない」と言えるだけの信念のある者だ。
そういう者がリーダーになる。リーダーになるなんて、簡単なことだ
(でないと、おかしい。このぼくでさえリーダーになったんだから。ね?)。

(それがぼくには楽しかったから、p287)

自分にこれだけ自信のある人が、怠惰だって?
私には到底信じられませんね。
これで怠惰だというのなら、世の中の人の大半はナマケモノの生まれ変わりでしょう。


このように確固たる信念を持っているように見える Linus ですが、
多少は悩む部分もあるようです。

オープンソース・コミュニティの中で
「技術面でも倫理面でも信頼できる男」
という立場を守るのは、なかなか難しい。

(それがぼくには楽しかったから、p251)

信用を勝ち取るということは、それほどに険しい道のりなのでしょう。
そして、それほどに重要なことなのでしょう。