本を読む本

本を読む本 (講談社学術文庫)

本を読む本 (講談社学術文庫)

久々にたまった本の感想を色々書こうかと思うのですが、まずこの本から紹介しないと始まりません。

「本を読む本」、というタイトルですが実際の中身は単なる読み方についての細かい技術的な話ではなく、読んで頭を使うための方法について書かれています。

筆者はこの情報のあふれる「現代」(本書が書かれたのが1940年であることに注意してください)で考えることなしに情報を得ることは受身的であり、もっと積極的に読書せよと述べています。
読んで考えることが積極的読書であり、書き手とコミュニケーションをとることで、物事の理解を深める手段である、というのが筆者の論です。
本書ではそういった意味での「読書」の方法について、4つのレベルにわけて説明しています。

  1. 初級読書
  2. 点検読書
  3. 分析読書
  4. シントピカル読書

初級読書は単なる読み書きができますレベルの話で、本書でもほとんど説明されていません。近頃の大学生は補習をして初級読書ができるレベルにまで引き上げなきゃならなくなった、とか有史以来お決まりの愚痴が書かれている程度です。
点検読書は、今でいう速読に近いものです。決められた時間のうちにその本が何のテーマについてどのように書かれたもので、それが自分にとってどのような意味があるかということを「点検」するための読書です。
分析読書が本書のメインディッシュです。本は完全に理解した上で正しく批判すべきであり、そのための方法が分析読書だと述べています。本を完全に理解するためのいくつかの方法と、批判するときの心構えについて書かれています。
シントピカル読書は一つのテーマについて同一テーマの複数の本を読むことでそのテーマについて答えを見つける、というものですが最早読書というより研究ですよね、ここまでくると。
以上4レベルについて説明しましたが、初級読書とシントピカル読書はどちらもあまり使わないのではと思います。初級読書は何も実りある話が記述されていないし、シントピカル読書は一般人には難しすぎます。(よほど興味のあるテーマがあるなら別ですが……)

点検読書

点検読書は以下の設問に答えるための読書です。

  1. 全体として何に関する本か。
  2. 何がどのように詳しく述べられているか。
  3. その本は全体として真実か、あるいはどの部分が真実か。
  4. それにはどんな意義があるのか。

読む方法としては以下のように説明しています。

  1. 下読み
    1. 表題を読む。
    2. 序文を読む。
    3. 目次を読む。
    4. 索引を見る。
    5. カバーに書いてあるうたい文句を読む。
    6. その本の議論の要と思われるいくつかの章を読む。
    7. ところどころひろい読みする。
  2. 表面読み
    1. わからなくてもいいから一通り通して読む。

私などはこれだけで十分読書した気になってしまいますね。
確かにこの通りに実行した上で上記の問を書き出してみると、それだけで理解が深まる気がします。
もちろん本書ではこれはまだ序の口です。

一通り点検読書を終えて、価値があると思った本だけ分析読書を行います。

分析読書

分析読書では「本の完全理解」と「本への批判」と、大きくわけて二段階の作業を行います。

  1. どんな種類でどんなテーマの本か。
  2. 本全体の概要を簡潔に述べる。
  3. 本を複数のパートにわけてそれぞれの概要を簡潔に述べる。
  4. 著者が解決しようとしている問題は何か。
  5. キーワードを見つけ、その意味を理解する。
  6. 重要な文を見つけ著者の主要な命題を把握する。
  7. 著者の論証となっている文を見つける。あるいはいくつかの文から著者の論証を組み立てる。
  8. 著者が解決した問題と未解決の問題を見極める。

以上が、本の完全理解のための手順ですが、これだけやるだけでも大変ですね。
理解ができたら次は批判です。

  1. 著者の知識不足である点はどこか。
  2. 著者の知識が誤っている点はどこか。
  3. 著者の論理性に欠ける点はどこか。
  4. 著者の分析・説明が不完全である点はどこか。

この問に答えられない限りはある程度は賛成しなければならないと述べています。
とはいえ、これを一冊の本全編にわたって実行するのは相当時間がかかって大変そうですね……。

まとめ

私は漫画を読んで何も考えずに笑ってるほうが好きですね。
この本の方法が役立つことはわかるのですが、いかんせん堅苦しいです。