アメリカとイギリスのドローン規制

首相官邸へのドローン襲撃事件をきっかけに、日本でもドローンに対する規制の議論が盛り上がってきました。
意外と規制反対している人が多くて驚きましたが、実際に海外だとどんな規制があるのだろうと思って調べてみました。

(注意: 私は法律の専門家でもドローンの専門家でもありませんので、記載内容の正当性に関して何ら保証することはできません。この記事を利用して発生したいかなる損害についても責任は負いません)

イギリスのドローン規制

元ネタ: http://droneflight.co.uk/pages/summary-of-uk-legal-requirements
ドローン開発会社 Droneflight 社による、イギリスでの法規制のまとめです。
法律そのものを読みたいかたはこちら: http://www.caa.co.uk/docs/33/CAP393_ANO_Jan2015.pdf
管轄: イギリス民間航空局 (UK Civil Aviation Authority)

用語 説明
航空機 ドローンを含む航空機全般。ここではドローンと読み替えて問題ない
小型無人航空機 要するにドローンのこと。
遠隔操縦者 要するに操作している人のこと。
CAA イギリス民間航空局

先ほど紹介したページに、以下のような項目としてまとめられています。

  • 航空機の操作によっていかなる人・モノも危険に晒してはならない。
  • 航空機は遠隔操縦者が視認できなければならない(通常水平方向500m以内、高度400フィート(約120m)以内)。これより遠距離まで操縦する場合はCAAの許可を取得しなければならない。
  • その質量に関わらず、偵察目的の小型無人航空機は、あなた(訳注:ここでの主体所有者、実行指揮者、操縦者なのかは不明)の管理下にない人及び資産の近くで飛行するときに最低距離に関してより厳しい制約を受ける。この最短距離よりも近い距離で飛行したい場合、操縦を開始する前にCAAの許可が必要である。
  • 金銭を対価にして行われる全ての飛行にCAAの許可が必要である。
  • 遠隔操縦者は、飛行が安全に行われることについて自分自身で責任を負う。
  • 以下の飛行禁止エリアを飛行してはならない。
    • 密集地帯の上空及び150m以内
    • 1000人を超える、野外の組織だった集会の上空及び150m以内
    • 航空機の責任者の管理下にない船舶、車両、構造物の50m以内
    • 離着陸時を除く、あらゆる人の50m以内。航空機の責任者を除くあらゆる人の30m以内を飛行してはいけない。


また、上記とは別のドローンに関連する規制が存在します。

故意かどうかに関わらず、小型無人航空機に搭載された偵察カメラの利用時に収集された個人を特定できる画像は、データ保護法の管理下にあることに注意すること。この法律にはそのような画像の収集、保存、利用についての要求が含まれているので、小型無人航空機の操縦者は適切な要求及び免除規定に従っていることを保証しなければならない。詳細については www.ico.org.uk を参照のこと。

アメリカのドローン規制

元ネタ: http://knowbeforeyoufly.org/for-recreational-users/
Know Before You Fly という、無人航空システムのNPOであるAUVSIを始めとしたいくつかの団体による啓蒙キャンペーンのサイトです。
上記の規制まとめは個人用で、他に商用向けと公共団体向けが存在します。情報が多いので全部はまとめません。必要に応じて原文を読みましょう。
管轄: 連邦航空局 (Federal Aviation Administration)

用語 説明
UAS unmanned aircraft system. 無人航空機、すなわちドローンのこと。
sUAS small UAS。小型無人航空機。
FAA 連邦航空局


繰り返しますが、この規制は個人向けです。商用の場合は上記リンクから別ページを参照してください。

  • Academy of Model Aeronautics (AMA) が作成したコミュニティベースのガイドラインに従うこと。
  • 飛行は高度400フィート(約120m)未満にし、可能なら周囲の障害物の下を飛行すること。
  • 常にsUASを視認できる位置にすること。必要なら観測者の支援を活用すること。
  • 有人航空機とは無縁の位置で飛行し妨害しないこと。また、他の航空機や障害物を常に視認して回避すること。
  • 故意に保護されていない人や走行中の車両の上を飛行しないこと。個人や壊れうる資産から少なくとも25フィート(7.6m)は離れること。
  • 空港から5マイル(約8km)以内で飛行する場合は空港や管制塔に連絡すること。
  • 悪天候(強風あるいは視認性が悪い天気)で飛行しないこと。
  • 飲酒やドラッグを使用した状態で飛行しないこと。
  • 操縦環境が安全であること、操縦者がsUASの操縦に習熟していることを保証すること。
  • 近づいただけで物議を醸すような場所、例えば発電所浄水場、刑務所、交通量の多い道路、政府関係の建物などの近く及び上空は飛行しないこと。
  • 私有地上空を飛行する前に現地の法律及び条例を確認し従うこと。
  • 該当する個人の許可なしに、プライバシーが保持されるべき場所で人を関しあるいは撮影しないこと。(AMA のプライバシーポリシーを参照のこと http://suas.modelaircraft.org/ama/images/sUAS_Safety_Program_web.pdf )

個人的な感想

どれもまともな内容で、むしろこのくらいの規制が日本にないことの方がおかしいと思います。
首相官邸ドローン襲撃事件についても、アメリカ・イギリスどちらの法律でも十分規制できる内容です。
規制されるとイノベーションが阻害されるという意見がありますが、上記と同レベルの規制で阻害されることなどまずありえないと個人的には思います。むしろ、こういう線引きがはっきりした方がドローン研究・事業に安心して乗り出せるのではないでしょうか。