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HoloLens所感: 33万円で買える未来

HoloLensを購入しました。$3000(当時の日本円で33万円)と、決して安くはない買い物でしたが、届いてから丸一日経った時点での感想としては、購入の判断は正しかったということでした。

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左右の物体は、サイズ比較のために置いたパワーブロックです。

元々VRデバイスが欲しくて、HTC Viveを購入するか、あるいは手でものを掴めるデバイスTouchが魅力的なOculusを買うべきか、それともコンテンツのラインナップが一番豊富になりそうなPSVRを買うべきか悩んでいました。

しかし、どれもゲームコンテンツがメインで、私の現在の多忙さを考えるとゲームメインのデバイスだとそれほど長続きしないだろうなあと思い、一番実用的なデバイスは何かと模索していました。

そんな中、HoloLensの存在を知り、値段の高さに驚きつつも購入してみることにした、というのが購入の経緯でした。

高いといっても、PSVRはPS4とセットで10万程度だからまだしも、ViveもOculusもゲーミングPCなども全て買い揃えるとなると結局30万くらいかかるので、それを考えればWindows含めて全部入りのHoloLensは特段高いとは言えないとは思います。

ハードウェア

まず重さですが、1時間連続してつけ続けても特に負担には感じない、という程度でした。筋力のそれほどない人であれば、数十分でも辛いかもしれません。辛いという意味では、目の疲れや頭のバンドの圧迫の方が大きいと感じました。数時間使っていると、目と頭がかなり疲れます。日常業務(8時間利用想定)には耐えられないでしょう。

バッテリーは4時間程度なら充電なしでも問題なく使えるので、思ったより長く使える印象です。頭に被っていても熱くなったりしないので、消費電力はかなり抑えているのだと思われます。充電の端子はmicroUSBです。

付属品として、HoloLensにおけるマウスに相当する「クリッカー」というデバイスが存在します。これもmicroUSB充電なのですが、なんとHoloLensにはmicroUSBケーブルが1本しかないため、標準の付属物では本体とクリッカーの同時充電ができません。もっとも、一日試してみた後の感想としては、特にクリッカーはなくても操作できるのであまり気にならなかったです。

キーボードは付属していないですが、パスワード入力など結局キーを叩かなければいけない場面は何度も遭遇するので、ほぼ必須と思っていいでしょう。Bluetoothキーボードが必要になるので、これから購入するという人は同時にBTキーボードは発注した方がいいと思います。

操作

操作は、顔の向きでカーソルを移動させ、手のジェスチャーでクリックやドラッグを行います。ジェスチャーについては公式サイト参照。

身体の正面で人差し指を真っ直ぐ立てると、点だったカーソルが中空の丸になります。この状態で人差し指を「クリック」すると、実際にクリックすることが可能になります。

もう一つのジェスチャーはブルームといって、手の甲を下にして正面で握りこぶしを作り、花が開くように手をそのまま開いていきます。これがWindowsで言うところの「スタートメニュー」に相当し、このジェスチャーによりメニュー画面を開くことができます。

今のところ利用できるジェスチャーはこれだけです。正直、横にスワイプなどができないのは直感的でなくて大変残念で、このジェスチャー部分についてはまだまだ改善の余地があると思いました。

キー入力はこのインタフェースでソフトウェアキーボードを使って行う。つまり、一文字一文字うつたびに顔の向きを少しづつ変えていき、空中で指を立ててはクリックを繰り返していくのです。キーボードなしで操作することが非現実的なことがわかると思います。

Cortanaを使った音声入力をメインのインタフェースとして位置づけたいという意志は伝わるのですが、なにせ英語しか対応していないので、英語の発音が苦手な日本人には大変辛いものになるでしょう。早めの日本語対応に期待したいものです。

グラフィック

肝心の映像周りについて紹介していきます。

HoloLensは起動時に部屋をスキャンして、壁や障害物の位置を把握します。これによって、「壁にウィンドウを貼りつける」などの演出が可能となります。壁をクリックすると、HoloLensがスキャンする演出をしてくれるが、これがとても美しい。

開いたウィンドウは、普通のPCのウィンドウと同じように、ドラッグすることで移動したり、角を引っ張ることで拡大したりできます。しかし、普通のPCと違い、どの向きにウィンドウを置くか、なども自由に決めることができます。全てのウィンドウは開いたまま位置が記録されるので、部屋をいくらでも散らかしっぱなしにすることができます!

デスクに座った状態で使用すれば、場所を取らないディスプレイをいくらでも量産できます。下のスクリーンショットではウィンドウが1枚しか映ってませんが、実際は右に1枚、左にもう2枚あります。私のデスクの周りには物理ディスプレイ2枚、HoloLensウィンドウ4枚の計6枚があるわけです。

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もちろんHoloLensを外せば元のきれいなままの部屋です。もしHoloLensを外しても部屋が汚いままであれば、そもそもHoloLensを扱うのに適した部屋ではないので片付けた方がいいでしょう。あちこち動くことになるので、足元が散らかってると危険です。

ウィンドウには近づくことができます。もちろん画面自体のズームも可能ですが、「小さくてよく見えない場合は近づいて見る」という行動が可能になります。ただし、解像度そのものが高くなっているわけではないので、近くで見ても粗くてよくわからないということは十分あります。

画面の拡大について最大の恩恵を受けられると感じたのが、動画の閲覧です。何せ、それこそ30万円では効かないような高価な大画面テレビと同じかそれ以上のサイズの動画を、一切部屋の場所を専有することなく、しかも好きな場所に設置できるのです!家にテレビがない私にとっては、これだけでも十分価値があると感じました。

HoloLensもいいことばかりではありません。最大の問題は、視野角の狭さです。事実上正面の一部分しか見れないと思った方がいいです。上下左右の端にホログラムは現れません。なので、「横目でウィンドウを見る」といった体験を行うことができません。これが私にとって今回最大の落胆ポイントでした。

「仕事しているときにたくさんウィンドウを開きたい」というのが購入の動機の一つでもあったのですが、この仕様により、首をいちいち向けなければウィンドウを確認できないということがわかったので、こうした使い方は不可能ということがわかりました。

アプリ

次に、アプリを紹介していきます。

デフォルトでMicrosoft Edgeが入っているため、ウェブブラウジングは何も問題がありません。最近のウェブサービスはほとんどがブラウザからの操作をサポートしているため、これがあるだけでほとんどのサービスを自由に使えてしまいます。

サンプルホログラムも色々なものが用意してあります。例えば、下のスクリーンショットはスクワットのレクチャー動画のホログラムです。

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Remote DesktopWindowsしか対応していませんが、Macへ接続するのであればVNCasterというソフト(有償、試用版あり)でVNC接続することができます。ただし解像度の関係と、Bluetoothキーボードのレイテンシの問題で、あまり実用性はありません。SSH可能なターミナルアプリはいくつか見つかったが、いずれも有償で、まだ試していません。

ゲームは比較的面白いものが揃っています。まず、自分の家の壁をこじ開けて襲い掛かってくるエイリアンを撃退するRoboRaid。弾の数こそ少ないですが、プレイしてみると3D弾幕シューティングゲームであることが経験者にはわかると思います。以下のスクリーンショットでは、エイリアンどもに私の家を壊されています。

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もうひとつはFragmentsです。記憶の断片(フラグメント)を探る超能力者となって、記憶の中の証拠を探して犯罪事件を解決していくというアドベンチャーゲームです。自分の部屋で犯罪現場を再現するため、自分の部屋をくまなく歩き回ることになります。面白いのは、「集中しないと記憶を再現できない」という設定で、視野角が狭く周辺視ができないHoloLensの欠点をうまくカバーしています。

最初におすすめされたもので残念だったのはHoloTourでした。世界中の観光地をツアーするというアプリなのですが、これは先程のFragmentsと逆で、HoloLensの視野角の狭さの欠点がアプリの欠点につながってしまっています。観光ツアーであれば、その土地に実際にいるという感覚が重要なのですが、何せ周辺の視界はいつもの自分の部屋のため、没入感が全く得られません。これだったら、GoogleがリリースしたHTC Vive用のソフトGoogle Earth VRの方がよほど没入感をえられるのではないかと思います(といっても、私はまだGoogle Earth VRを試していませんが)。

Skypeは、HoloLensを被っている自分自身の視界を相手に見せることができます。つまり、ウィンドウが中に浮いている部屋の映像をそのまま相手に見せることができます。部屋に矢印を書いたりフリーハンドで線を描いたりすることができるので、相手に何かを伝えたい場合はとてもいいツールと感じました。一方で、当たり前ですが自分の顔は相手に見えないため、相手は常に自分自身の顔を見ながら会話することになります(顔が写っている画面の移動はできます)。お互いの顔を見たいのであれば、HoloLensは外した方がいいでしょう。

その他気づいたこと

部屋の照明を暗くすることはできません。HoloLensは部屋の明度も壁の位置認識のために使用しているらしく、動画などを観ようとして部屋を暗くすると壁の再スキャンが走ります。

Windowsマシンがないと、HoloLensの映像を同時に他者が見ることはできません(Skype使うという手もありますが)。集団で楽しみたい場合はWindowsマシンが必須ではないかと思います。

所感

正直今のHoloLensそのままでは、いきなり生活が一変するということにはまずならないだろうと思いました(開発版なので当たり前ですが)。生活一変させたければパワーブロック買った方がいいです。*1

面白いアプリはそれなりにあるものの、どれもなくても生活できるものばかりで、触ろうが触るまいが明日生きていくのにそれほど変化はないと思います。

しかし、未来は間違いなくHoloLensの中にあると感じました。視野角の問題はデバイスの改良によって解決していく問題ですし、キラーソフトウェアの不足という問題は市場が大きくなるに従って改善していくでしょう。しかし、ホログラムを自在に扱えるという体験は、他のデバイスやソフトウェアでは絶対にできません。没入感の強さという観点では他のVRデバイスの方が優れているものの、ワイヤレスデバイスで、現実世界を見ながら仮想空間の世界をオーバーレイできる、つまり現実の生活を行いながら仮想現実の世界に踏み込めるという体験はHoloLensだけが提供してくれるのです。

そういう意味で、「顧客が本当に欲しかったARはこれだったんだ」と感じました。今や既にWikipediaの中だけの存在となってしまったセカイカメラよ、あなたは生まれてくるのが早すぎました。

ほぼ確実に、2018年にはもっと安くて性能のいい次世代機が出るでしょうし、2019年、2020年にもその傾向は続くでしょう。5年後には、「2016–2017年の頃に33万も出してあんな低スペックなマシンを買っていたなんてバカなやつらだ。もう少し待てばよかったものを」と言う人が出てくるのは間違いありません。それでも私は、今この瞬間にこの体験をする価格が33万円なら十分安い買い物だと自信を持って言えます。

今のHoloLensを買っても生活は一変しません。しかし、未来を知りたければHoloLensは試した方がいいし、未来について語りたければHoloLensは試さなければいけないだろう、と感じました。HoloLensがある未来をイメージできなければ、未来をイメージすることは難しいのではないかと思います。

変更履歴

2017/01/22 1:30 「その他気づいたこと」追加、所感の部分にパワーブロック押しの文章を追加

*1:パワーブロック、HoloLensの半額以下(12万円)で、確実に人生変わることを保証できるすぐれものです。生活を一変させたい人は今すぐ買いましょう。