2013年夏のプログラミング・シンポジウム ビューティフルデータ(1) 午前 #spro2013

(講演者の方の氏名は敬称略)

[招待講演] パーソナルデータ保護法制に向けた最近の動向 高木浩光(産業技術総合研究所)

ここ2年ほどで急にきわどい事例が出始めた
(なんかたがが外れた感じ。技術的に実現可能になったからではない)


本人の同意があれば問題ない
ただし、真に同意があると言えるか疑わしい事例あり
契約上の同意だけでなく、自主的な同意がないとダメというのが法律家の意見
コンテキストに沿わない取得と利用(誤認誘導型)


特定の個人を識別できないデータならOKという主張
なぜそう思うの?逆になぜ特定の個人を識別できるデータはヤバいと思うの?
個人情報保護=連絡先の保護と誤解している人も何割かいる


何をもって匿名化されていると言えるか
PPDM privacy preserving data mining などの技術を前提に制度設計してよいか否か
政治家は、こういう技術が社会的にどう影響を与えるかわからない


例: ロンドンのスマートゴミ箱
通行人を識別してた→問題とされて試験運用を中断

この半年の動き
    • 総務省 パーソナルデータの利用・流通に関する研究会
      • 情報セキュリティ対策室10月設置、6月報告書
      • 個人情報保護法を超越した保護。利活用の制度を提案
      • パーソナルデータ⊃個人情報
    • 経産省 IT融合フォーラム パーソナルデータWG
      • 情報経済課 11月設置、5月報告書
      • 消費者と事業者の信頼関係の構築→有効な同意の確保へ
    • 内閣府 規制改革会議 創業等WG
      • 内閣総理大臣諮問 1月設置 3-5月WG、6月答申
      • 氏名住所削除で匿名データとみなそうとするが失敗
      • 現行法を無視してガイドラインで合法化を目指す方向性

6月14日 世界最先端IT国家創造宣言


国際先端テストの結論(消費者庁)
「匿名化情報の利用に関する日本と欧米の制度の比較」
特定個人を識別できるような対応表を廃棄すれば問題ない、法改正は必要ない
→そんなことはない



個人情報保護法

個人情報とは
生存する個人に関する情報であって
氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの
(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)


法解釈上の論点
「識別することができる」は誰によって識別という話か?
提供者基準(政府及び消費者庁・経産省、鈴木)
受領者基準(岡村)


岡村久道 個人情報保護法 新訂版、商事法務、2009
Aにとって識別性を具備しない情報を、これを具備するBに提供するケースは実際に発生しうるか疑問
→これは誤り


X(識別性あり) → Y(識別性なし) → Z(識別性あり) を想定していない



  • 業務委託との混同に注意
  • データ分析の業務委託の場合(政府説での理解)
    • 委託契約の元で履歴データを提供(預託)する
    • データから氏名等を削除して臨時のIDを付して渡すのが通例
    • その意図は、安全管理措置として事故字の被害を軽減するためであり、個人データの提供に当たらなくする(個人情報に該当しなくする)ためではない
    • 委託先は委託元と一体であるから委託先においても個人データ


JR-日立の例
一旦JRが受け取った後の統計データであればまだよかった
業務委託した日立がデータ提供しているのが問題
似てるようで全然違う
現行法だと違法だと言っていい


現行法
提供毎にランダムIDを付与するのは合法
→提供毎に過去全部のデータを提供してしまえば無意味




データ自体による照合性
k-匿名性との関係(全データがk=1だったら?)



適切な匿名化措置
匿名化したデータを再識別化しないことを約束・好評
第三者に提供する場合は、提供先が再識別化することを禁止すること




ゲノム科学におけるビッグデータ・データマイニング 石井一夫(東京農工大学)


バイオインフォマティクス、計算機統計学、ゲノムのデータ解析が専門
「Rによる計算機統計学


次世代シーケンサーとは、2005年ごろ実用化された新型分析機器。
大量拘束にDNAを解読可能で、ヒトゲノムを3時間程度で解読
個装基板上にDNA断片を子草加市、これを蛍光色素+酵素反応などを用いて、同時並列的に解読。CCDカメラで撮影+コンピュータで処理。
1検体大体数GBで、数百GBのデータを日常的に処理する。大体1000人程度で200TB
このデータを解析していく。

1. 画像処理からDNA塩基配列を取得する。
2. 配列を集計、編集していく
3. 統計処理をしていく

分散しやすいところ(マッピングやBLAST検索)はHadoop (AWS EMR)、分散しにくいところは大量のメモリ(4TB)を積んだサーバで処理

  • Hadoop上で動作する分析ツール
    • Crossbox(ジョン・ホプキンス大学)
    • Contrail
    • Myrna
    • GATK(Genome Analysis ToolKit)


次世代シーケンサーデータの品質管理

サンプル濃度の間違いや試薬濃度の間違いなどの解析
モンテカルロを使うと精度よく品質解析可能


Q. 圧縮してないの?
してる場合もある、と回答してたのであまり圧縮してないっぽい


数式を綺麗にプログラミングするコツ 中谷秀洋(サイボウズ・ラボ)


スライド http://www.slideshare.net/shuyo/programming-based-on-formula


数式

数式から行間の情報を読み解く

「逐語訳」できる形に数式を書き換える

実装


きちんと計算後の次元・サイズを確認する
さぼらず紙と鉛筆で確認するのが一番賢い

2013年夏のプログラミング・シンポジウム ビューティフルデータ(2) 午後1 #spro2013

長いので複数記事に分けました。

[招待講演] 製鉄所における大量品質管理データの解析事例と課題 茂森弘靖(JFEスチール)

15年ぐらい製鉄所の新しい設備を作ってた
5年前に研究所に移ってデータ解析しはじめた

  • JFEスチール
    • 東日本製鉄所
    • 西日本製鉄所
      • 福山・倉敷
    • 知多製鉄所


今日は倉敷地区




高炉→転炉→連鋳
これで圧延向けの半製品を作る
そこから各種工程に分かれて様々な製品を作る

  • 顧客数2万社→製品8万種→80万件/月オーダー
  • 設備数 140
  • 通貨工程 5600
  • 生産量 3000万トン / 年
  • 清算業務管理用計算機 Level4
  • 創業間利用計算機 Level3
  • 製鉄所基幹LAN プロセス計算機 Level2
  • 計装DCS LAN ・ 電気PLC LAN
  • デジタル制御装置 Level1
    • 10us 周期など


プロセス計算機ソフト量
2000年ぐらいで 800万ステップ


実装されるモデルの数が飛躍的に増大
蓄積されるデータの量は飛躍的に増大


鉄鋼製品の特性
引張強度 200 - 1500 MPa
すごい幅が広い


鉄鋼製造プロセスの特長
巨大装置産業
注文に基づく清算が基本
多品種・少ロット清算へ対応可能
多くの工場・プロセスを経由
etc.




鉄鋼製品の品質指標

  • 材質
    • 最も重要な品質指標
    • 強度
      • 引張強度
      • 降伏点
      • 伸び
    • 靭性
      • 吸収エネルギー
      • 遷移温度
    • 磁気特性
      • 鉄損
  • 寸法
  • 形状
    • 板クラウン
    • 平坦度
    • 平面形状
  • 表面品質


品質管理業務フロー

  • お客様から注文
    • 要求材質
      • 強度
      • 靭性
  • 品質検討
  • 受注可否判断
  • 製造条件
    • 化学成分
    • 加熱条件
    • 圧延条件
    • 冷却条件


製造条件から品質(材質)を精度良く予測する手段が必要

材質予測モデルの概要
  • 冶金プロセスと製造プロセス
  • 金属組織の変化をオンラインで解析するのは非常に困難


局所回帰モデル
要求点に近い事例で回帰分析


材質予測モデルのデータセット 約10,000
生産サイクルに合わせる
FIFOで更新


微量金属の強度への寄与
局所回帰モデルによって、偏回帰係数の変化を計算
飽和現象がうまく表現できた

  • 従来手法とその問題点
    • 近い事例での検索
    • 線形回帰式で材質予測
    • 設計負荷が高い
    • 精度が悪い


品質設計問題の定式化
2次計画問題を逐次解く
多目的最適化問題


データマイニングツールのビジュアルプログラミングを利用
数理システムの Visual Mining Studio



多変量統計敵プロセス管理


各操業条件の実績値が互いに相関をもって連動することに着目
各操業条件データを連動する方向をもとに整理(主成分分析)し、2つの変数を監視


相関しているはずが、逆相関の結果を検出する
単に元の変数だけ見てるとわからない

T2統計量
製造仕様の変更、実験材投入など
人為的バラつき

Q統計量
センサー異常、機器故障など
突発的バラつき


従来の監視者の業務
管理データ 1000超
データ抽出・編集作業 2時間/工場

MSPCによる解析
基準データ(異常のない通常操業のデータ)
実績・評価用のデータ

それを解析してT2やQ統計量を出す

MSPCにより原因候補を抽出


10年前は懐疑的な人が多かったが、そういう人は10年間で会社辞めてってるので……

Q. どれくらいきれいなデータでやってるのか?(PFI 比戸さん)
A. 欠損データは除くようにしている
このデータはこの範囲にないといけないはずだというテーブルを持っている
3σより外れたものは削除している
試行錯誤の中で導入している

「コロケーション・パーチェスビッグデータの対応分析クラスタリングによる類似地域推薦システム」大槻明(東京工業大学)


Twitterから位置情報(コロケーション情報)その中でも市区町村の情報と「どこで何を買ったか」(パーチェス情報)を取得
これを2部グラフとしてとらえ、対応正を類似尺度としたクラスタリングを行う

クラスタリングの結果生成される類似地域を可視化
未完成


先行研究
計量書誌学とModularity
約3万件のデータマイニング系論文データを可視化したイメージ
計量書誌学: 論文引用の研究
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A8%88%E9%87%8F%E6%9B%B8%E8%AA%8C%E5%AD%A6


Modularity Qによるクラスタリング
モジュラリティ: コミュニティ分割時の評価関数
モジュラリティ値が高いときにグループ分割をすれば、
グループ(モジュール)内でのつながりが密な状態で、グループ外とのつながりが疎な状態ができる

Modularity はリンク無制限のネットワークには使うことができるが、2部グラフには使うことができない

Modularity Qの2部グラフへの応用(先行研究)
Barber のQb、村田のQm、etc.


Twitterからのデータ取得
対象期間: クリスマス
2012/12/22 - 25

取得件数: 1,083

使える情報: 731

パーチェス情報
どこで買ったか
@つきなどで位置情報があるものは自動抽出、ないものは手動抽出

何を買ったか
Chasen係り受け抽出

Uppertail法による階層クラスタリング
→x-means法へ

kmeans をつかて2分割を繰り返すが
BIC(ベイズ情報推定)を使う










ストリーム解析処理再訪〜HPCの観点から〜 秋岡明香(明治大学)


研究の目的

  • ストリーム解析処理の挙動解析とモデル化
    • データインテンシブとは根本的に何が違うか
  • ストリーム解析処理のベンチマーク


データインテンシブは write once read many
ストリーム解析は write once read once


データインテンシブ
データアクセスの高速化がアプリケーション高速化の鍵!


ストリーム解析処理
データアクセス高速化してもちっともうれしくない
高速化戦略を見直さないといけない


ストリーム解析処理の一班モデル(1)
「流れてくるデータをフェッチする。余す所なくフェッチする」


流れてくるデータ→処理1→スケッチ
処理1: 非常に軽い処理じゃないとダメ
スケッチ: キャッシュのような記憶領域
処理2: スケッチからデータをとって解析する。DBなどに叩き込む
処理3: DBなどから取り出して解析する。


処理1〜スケッチ〜処理2 の高速化が課題
スケッチはデータ依存・処理依存


ストリーム解析処理の一般モデル(2)
データフェッチ + スケッチ read → 処理1 → スケッチ write → スケッチ read → 処理2

n番目のデータを処理するプロセスと同時に、n + 1 番目のデータを処理するプロセスも必要


タスクグラフ
アプリケーションのデータ依存や制御依存、計算コストなどを模式化した有向グラフ
スケジューリングアルゴリズムの評価時など対象アプリケーションとして擬似的に使用


実行時間見積もりに関して
計算対象のデータ量等で実行時間の大きな変動が起こりうる
Min-Summaryのしきい値再計算など
平均値による実行コストの見積もりは意味なくなるかもしれない


too many cores の時代到来?