彼女と別れた

「なぜだい!? なぜいきなり別れるなんて言うんだ!?」

「……あなた、私のこと愛してる?」

「もちろんだとも! 世界で君のことを一番愛してる!」

「……じゃあ、これは何よ?」

彼女は両手で抱えるように持っていたものを撒き散らす。

それは何枚ものDVD-RとCD-Rだった。

「……! そ、それは……」

「答えてよ! これでもまだ私のこと愛してると言うの!?」

落とした拍子にケースから飛び出し転がったDVDやCDには

マジックで文字が書かれていた。

『Fedora8(x86)』
『Ubuntu7.10』
『Clonezilla』

「ほんの出来心なんだ! 僕が一番大切にしているのは君だ!」

「嘘! もうあなたの言うことなんか何もかも信じられない! 出てって!」

「っていうかここ僕のうち……」

出てって!!

「わ、わかった……出ていくよ……」

泣きじゃくる彼女を横目に、僕はコートを羽織り、靴を履きながら考えていた。

そしてドアを開けた僕は、彼女に告げた。

「最後に一つだけいいかい?」

「……何よ」

「明日定期バックアップの予定日なんだ。外付けハードディスクをつないでレスキューCDでブートして……」

早く出てけ!!!






…………っていうやりとりはさすがにありませんでしたが、彼女と別れました。