誰もがドラえもんになれる〜世界を変えるデザイン展〜

世界を変えるデザイン展に行ってきました。

発展途上国の人々や、貧しい人々の抱える問題を解決してきたデザインを持つ製品が展示されていました。
それらのほとんどは、iPadとか3D映画のような、最先端の科学技術を駆使した製品とは全く異なる、とても簡素なものばかりです。

例えば、水の殺菌装置というのがあります。
ただ単にアルミの板にペットボトルをいくつかくっつけて並べただけのものです。
このペットボトルの中に水をため、日光にさらしておけば殺菌ができる、という仕組みです。
その値段はたった数ドルと非常に安価です。
しかし、たったこれだけのことで非常に多くの人々の水の衛生環境を改善できるのです。

最先端の科学技術ではないかもしれません。
しかし、コスト、簡便性、耐久性、現地生産の可否などを考慮した上で生み出された、最先端のデザインがここにありました。


写真を撮ってきましたのでいくつか紹介しましょう。



なんと出産セットなんてものがあります。
へその緒を切るための道具や、心音を測るための装置まで一通りそろっているそうです。
手前にある駄菓子のような紙箱に収められています。
当然安価。



太陽光による調理装置。
電力としてではなく、熱源として太陽光を使う例は珍しいそうです。
これで雪を溶かして水にするところもあるとか。



空き缶の上にフタ上のものをはめて、注射器の針回収ボックスの完成。
これなら針が袋から飛び出て刺さる、なんてことはありません。
とてもいいリサイクルです。



プロダクトだけじゃありません。
この展示では、説明が非常にわかり易く描かれています。
上のイラストを見れば、
「調理の煙で困っている人がいる、だから煙のあまり出ない調理器を開発したんだな」
ということが立ちどころにわかります。
課題と解決方法のビジュアライズです。

感想:誰もがドラえもんになれる


この展示で紹介されている製品、これらは特に先端技術を使っているわけではありません。その気になれば私たちでも簡単に作れてしまうでしょう。
しかし、これらの製品は今までほとんどの人が作ってこなかったものです。
そして、生み出された途端に世界を変えてしまったものなのです。
私たちから見れば安っぽいプラスチックの製品でも、彼らからしてみれば魔法のように見えているかもしれません。
「あんなこといいな、できたらいいな」と思うことが実際に実現できてしまうわけですから。
ドラえもんからしてみれば、数々のひみつ道具は当たり前のような、ありふれた技術で作られた製品としてしか見えていないのかもしれません。

ところで、ドラえもんひみつ道具ですが、この展示の中にもまさにひみつ道具を実現した製品がありました。



Lifestraw。このストローで水を吸うと、濾過してくれるというものです。
ドラえもんひみつ道具にもほとんど同じものが登場したのをご存知ですか?
ま水ストローという道具があります。
こちらの方は海水を吸うと真水になるというもので、さすがに現実のものより高性能ですが、しかしほぼ現実の世界で再現できたといってもいいでしょう。

このストローを見たときに、私は気づきました。


ドラえもんは、現実にいるということに。
そのドラえもんとは、私たち自身に他ならないということに。

私たちは誰もが頭の中に四次元ポケットを持っているんです。
別にその道の超一流の学者でもない、ただの先進国の一般人である私たちでも、工夫次第で「のび太くん」を助けてあげられるのです。
タイムマシンは飛行機です。
ドアを開ければ、そこにはたくさんの「のび太くん」がいるでしょう。

この展示は、世界の「ドラえもん」達の展示だったのです。


私は、ドラえもんに会ってみたいと思ったことはあっても、自分がドラえもんになりたいとは思ったことはありませんでした。
しかし、現実には私たちは確かにドラえもんになれてしまうだけの知識も技術も(多分、財力も)あるのです。
とても難しい問題です。
本当にドラえもんの立場になって考えたとき、何をどうすべきなのか全くわかりません。
もちろん、無理にドラえもんになる必要なんて全くないですし、先進国におけるのび太のままでいることもできます。
どちらの道を選んだらいいでしょうか?
少し考える必要がありそうです。


さて、この展示には元になっている本があります。

世界を変えるデザイン――ものづくりには夢がある

世界を変えるデザイン――ものづくりには夢がある

中身はこの展示とかなり密にリンクしているようで、展示されていた製品についての説明も色々書かれています。

会場でも売ってましたので買ってしまいました。

6/13までやっていますし、夜7時(アクシスは8時)までやっているので会社帰りでも行くことができます。

面白いので是非行ってみてください。