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リスクヘッジと給料と英語

この記事の要約

  • 英語が話せるようになれば、日本の人材市場ではなくグローバルの人材市場で自分の価値を判断されるようになる
  • ITエンジニアにとって日本語のみの仕事はグローバルに比べて給料・待遇ともに劣っていて、各種経済予測からこれが改善されることは絶望的
  • 英語使ってグローバル企業で働くことは、「一攫千金や立身出世を狙う野心家のキャリアパス」ではなく、ITエンジニアにとって生き残るための必須能力となりつつある


あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

最近、私の会社で日本での本格的な採用活動を始めました。その関係で転職に興味ありそうな人と色々と話をしているのですが、全員が共通して「英語がきつそうで……」といった反応でした。いずれも技術者として優秀な方々ばかりで、その技術の修得に多大な努力を要していたはずです。自然言語というものは、母語であれば普通は特に専門教育を受けずとも使えるようになるものです。 また、世界の高等教育を受けた人の多くは第一外国語を使いこなして仕事をしています。私が今回出会った方々が、どんなに努力しても絶対に英語が使えるようにならない、とは私には考えられません。

とは言うものの、本記事では「なぜ日本人は英語が苦手なのか?」について論じるつもりもありませんし、英語の勉強法について論じるつもりもありません(既に過去記事に書いた通りです)。今回は、この最近の採用活動を通して気づいた、英語と給料と仕事のリスクヘッジについて自分なりに気づいたことを書き記そうと思います。

日本のITエンジニアの給料、安くない?


まずは給料のことについて話しましょう。私がお話した方々の給料の話を聞きますと、総じて予想以上に低いと感じました。詳細はもちろん書きませんが、あまりにバブルになりすぎているUSのベイエリアはともかくとしても、USだけでなく例えばシンガポールなどと比較しても、安すぎる気がします。

私が気づいたこの給与格差を、かなりぼかした上で採用とは関係のない知人に話をしてみたことがあります。「いや普通はそんなものだろ」という答えが返ってきました。「むしろ、日本の一部のIT企業で、超一流でもない人達に一千何百万のオファー出したりするのは完全にバブルだと思う」という意見ももらいました。

超一流ではないにしても日本でそこそこ優秀であれば、確実に世界平均を遥かに上回るエンジニアでしょう。英語さえしゃべれれば今より遥かにいい給料をもらえるだろうにな、と私は思います。グローバルで戦う企業にとって優れたITシステムを持つことは死活問題であり、そのためには一人でも多くの優秀なITエンジニアを雇うことが重要です。だからこそ、世界中の企業は優秀なITエンジニアに十分な給料を支払うのです。

海外の方が給料がいい、という話をすると、大抵次にこのような意見をもらいます。「しかし、海外の企業だとあっという間にクビになるだろ?」この意見について少し反論してみたいと思います。

外資系だとすぐクビになる」という意見への反論


まず第一の反論として、普通は技術者をクビにすることはそうそうありません。成果出なかったらクビ、などという修羅場に身を置くのは大抵営業やエグゼクティブであり、技術者はそう簡単にクビを切ることなんてできません。そんなことをしたら企業からあっという間に技術が失われ、ビジネスはすぐに立ち行かなくなるでしょう。

とはいえ、技術者をクビにするケースもあります。まず一つ目は、「どうしようもなく無能な社員」の場合。 何年も会社に勤めている人のほとんどが、「あの人はなんでクビにならないんだろう」と誰もが思うような、働かない社員を見たことがあるはずです。こういう人がきちんとクビになるという仕組みが整備されているといった方が正確だと思います。もう一つは、会社が戦略的な方針変更を行い、その技術や事業が不要になる場合です。これはもう個人の問題ではないので仕方ありません。結局クビになる可能性あるんじゃないか、と思うかもしれませんが、こういうケースのときに飼い殺されるのとどちらがいいのかは考えてみてもいいと思います。また、上司やエグゼクティブが無能で、彼らの誤った決断によりクビになるケースもあります。こうしたケースがあるからこそ、第二の反論につながります。

第二の反論は、「クビになるけど別に問題はない」というものです。なぜでしょうか?実績を積み、自分の技術を広く知ってもらえるようになれば、その人を欲しいと思う企業はたくさん出てきます。エンジニアがクビになると同時に、他の企業にとっての人材獲得争奪戦がスタートするのです。野に放たれた優秀な人材を一体いくらで雇うのかの勝負になります。数年前になりますが、私の会社のある社員が解雇されたとき(私は理由は知りません)、「解雇されたってツイートに書いたら、今日だけで5つもオファーきたぜ」とツイートしていたのを見て驚いたものです。もちろん、それほど対外的な活動をしないような部署にいれば、なかなか企業から声がかからないかもしれません。しかしその場合でも、普通に面接を受けていけば、ほしがる企業はたくさん出てくることでしょう。ITエンジニアにとって、転職の面接とは「自分が企業の面接を受ける場」ではなく「自分が企業を面接する場」なのです。

日本市場にだけ出回る人材


さて、「外資系企業だとすぐクビになる」という意見について、「外資系企業とはいえ技術者をクビにすることはそうそうない」「技術者はクビにされても大した問題にならない」と2つの観点から反論しましたが、当然のことながらこれは「英語が喋れること」が前提となります。英語が喋れなければ、いくら優秀なエンジニアであってもそれを証明することもできず、雇ってから教育することもできないし、困っていても助けることもできなません。つまり一緒に仕事をすることができないのです。そして、日本においてはもちろん上記の反論は一切成り立ちません。それどころか、いくつかの点においてもっとひどい状態であると私は感じます。

まず一つ目は、クビにならないにしても給料が安い、あるいは給料は安くないにしても環境が悪い(激務、つまらないプロジェクトなど)という仕事があふれているということです。こうした状況について個々の企業を責めることは私はしません。なぜなら、日本語しかしゃべれないエンジニアは結局少ない選択肢の中でマシなものとしてそうした仕事を選んでくれるからです。市場に良い人材が安く出回っているのであれば、安く買うのは当然のことです。「今の自分は日本企業で働いているけど給料いいし仕事も面白い。だから何も問題ない」という人もいるかと思いますが、ではその会社以外に、同程度のレベルの会社は日本にどれほどあるでしょう?今の会社がそのような待遇で扱ってくれなくなったときに、他の選択肢はいくつあるでしょう?日本語しか喋れないというだけで、そのエンジニアは日本市場の中だけに出回り、そのエンジニアの給料は日本市場の相場で決まっていきます。英語を使えるのであれば、グローバル市場の中で、日本を拠点にして働くエンジニアという視点で見てもらえることになります。

そして二つ目は、相変わらずクビになることを汚点ととらえる日本の風潮です。海外では会社をやめるというのは自分の給料や待遇を上げることのできるチャンスであるのに対し、日本では人生の破滅かのように言われます。こうした考えを雇う側も雇われる側も持っているので、「クビになりやすい=怖い」という感覚になるのだと思います。英語さえ喋れるのであれば、クビになることは大して怖くないはずです。

「いやいや、自分は高い給料もらっているし恵まれた環境で働いている。自分の周りにもいくつもそういう企業があるし、新しい企業もどんどん日本で生まれている。そんな心配は一切必要ない」はい、上記に当てはまらない人ももちろんいることでしょう。しかし、2050年にはGDPが世界7位まで転落し*1、人口は全世界100億人に達しようかという一方で自国の人口が1億人切るかどうかという予測がされている*2この日本だけのローカル言語に頼ったときに、果たしてどれだけの人がその恵まれた環境を維持できるのでしょう?今はよくても10年後、20年後を考えればそのリスクはどんどん高くなっていくはずです。

「世界第7位で全世界の1%の人口だったら十分じゃないか。フランス(2014年GDP世界8位)、ドイツ(同5位)、イタリア(同12位)だって非英語圏でも立派な先進国だ」という反論もあるでしょう。しかし、フランスは元植民地国との交流があるのでフランス語圏の国が多い上、そのフランスのエリートでさえ国際的な共通語として英語を使っている事実は忘れるべきではないでしょう。ドイツやイタリアにしても同様です。日本語では他国と交流できないという事実から目を背けてはいけません。

まとめ


今日の話をまとめます。

  • 英語が話せるようになれば、日本の人材市場ではなくグローバルの人材市場で自分の価値を判断されるようになる
  • ITエンジニアにとって日本語のみの仕事はグローバルに比べて給料・待遇ともに劣っていて、各種経済予測からこれが改善されることは絶望的
  • 英語使ってグローバル企業で働くことは、「一攫千金や立身出世を狙う野心家のキャリアパス」ではなく、ITエンジニアにとって生き残るための必須能力となりつつある

新しい技術の修得も大事ですが、今年はもう少し英語修得の優先度を上げてみてはいかがでしょう。