数学ガール・ゲーデルの不完全性定理

数学ガール ゲーデルの不完全性定理 (数学ガールシリーズ 3)

数学ガール ゲーデルの不完全性定理 (数学ガールシリーズ 3)

待望の第3巻です。

実はたまたま直前に「無限を読み解く数学入門」を読んでいたので、内容に関しては被る部分も多く、大いに理解の助けとなりました。

この「数学ガールゲーデル不完全性定理」と「無限を読み解く数学入門」、どちらもゲーデルデデキントカントールなどを中心として無限という概念について語る本であると同時に、小説的要素を持っています。
「無限よ読み解く数学入門」では最終章に、超越数をテーマにしたSF小説が登場します。
ストレートに数学を扱う「数学ガール」とはまた違う世界観を楽しめますので、「ゲーデル」が面白かった方はこちらの本もおすすめです。

ポリア先生の引用


章の最初と最後の引用文というのは、「数学ガール」においても(また多くのコンピュータ系技術書においても)楽しみの一つであるわけですが、今回は特に5章末で Polya の文を引用していたのが印象的でした。
というのも、これまた偶然、「いかにして問題をとくか」という本を少し前に読んでいて、そちらで同じような文章に感銘を受けていたからです。

ゲーデル不完全性定理」の5章ラストには、「数学の問題の発見的解き方2」よりこんな文が引用されてます。

貴方がたは泳ぎを覚えたければ水の中に入らねばならないだろう。
同様に、もし貴方がたが問題の解ける人になりたいと思えば、
幾つもの問題を解いてみなければならないのだ。

「いかにして問題をとくか」にはこんな文があります。

問題を解くということは、例えば水泳の練習のようなものである。
どんな練習でも真似をし、熟練しなければならない。
泳ごうとするならば他人が手足をどんなにうごかして水面に頭が出るようにするかを
みて、その真似をし、熟練によって水泳を覚える外はない。
問題をとこうとするならば他人が問題をとく時はどのようにするかを真似して、
それにより学ぶ外はないのである。(p.8)

こうして別々の本で同様のことを書くということは、ポリア先生の基本となる考えなのでしょうね。

いかにして問題をとくか

いかにして問題をとくか

ミルカは本当に数学の才能があるのか?


作中最も頭のいい人は誰かと問われたら、私はためらいなくユーリと答えます。

中学2年生で、しかも特に数学を毎日やっているというわけでもないのに恐ろしいほど高い論理的思考能力を持っています。

テトラもまた卓越した発想力を持っている非凡な女子高生です。

ではミルカはどうか? というと、私は彼女がどれほど頭がいいのか正直分かりません。

間違いなく秀才的頭のよさはあります。フェルマーゲーデルの難解な定理を、人に解説・指導できるまでに理解するというのは並の高校生ではできないでしょう。

しかしそれと数学的発想力とはまた別のはずです。

作中ではミルカの思考プロセスは一切見えません。彼女はただ他の3人への指導役に徹しています。

3巻まで読み終えた段階では、ミルカよりもユーリやテトラの方がはるかに数学的才能に恵まれている気がします。

ミルカの数学の才能を見ることができるのはいつの日でしょうか。

やっぱり手を動かさないと


流し読みするだけならとても簡単です。

でも、クロスワードパズルを答えだけ眺めても面白くないのと同様、この本を読むときは筆記用具を携えた方が断然楽しいです。

ちょっとでもいいから考えて、数式をいじって、「やっぱりわかんない」ってギブアップして、とやるだけで楽しさが何倍にも膨らみます。