あけましておめでとうございます。
一昨年は大晦日の夜は一人で過ごしながら hadoop のパッチを書いていましたが、昨年末は大晦日はおろか新年の元旦含めて年末年始ぶっ通しで仕事に追われてました。
そんなわけでコミケもネットで眺めてひっそり楽しむ程度だったわけですが、一つ非常に印象に残ったツイートがありました。
「 「コミケ来場者は客」 みたいな奴マジ来るな死ね!」とスタッフ暦=半生の先輩に言うと決まって帰ってくる言葉は 「教育して、仲間にする。新兵はいずれ古参兵になる。そうやってコミケは歴史を積み重ねて来たんだよ。」と言われます。 スタッフは皆が思っている以上に寛容で大きいぞ。
2012-12-30 16:03:53 via web
真偽のほどは分かりませんが、こうしたポリシーはコミュニティを長生きさせる上で非常に重要です。
コミュニティが小さいうちは、お互いをきちんと理解している仲間だけで行動しているのでコミュニケーションの問題はほとんどありません。
しかし、ある程度大きくなると、コミュニティに「非協力的な」人がでてきます。
例えば上記のツイートに書いてあるような、コミュニティのポリシーに反した言動を行う人達です。
こうした人を放置しておくと、単にその人の周りの迷惑になるだけでなく、他の(特に新参の)コミュニティ参加者に誤った考えを植えつけたり、コミュニティに対する外部からの見方も変わるなど、コミュニティ全体に影響を及ぼすことになります。
よってこのような人達に対して何らかのアクションをとらなければいけないわけですが、このような「悪い人」達に対して叱責し、ひどい場合は排除するというアクションは割と広く受け入れられているのではないかと思います。(一応念のため書いておきますが、コミケの話ではなく、一般的なコミュニティの話です)
しかし、上記のツイートのような考えこそが、コミュニティの健全さを保つ最高の考え方です。
実はほとんど同じ話が、コミュニティ形成・運営について書かれた書籍「アート・オブ・コミュニティ」に書かれています。
対立を避けるためのtips
- コミュニティの中の人の行動に影響を与える要因について理解しましょう。
- 対立を引き起こす人がいたら、彼らがどれくらい成長できそうか考えます。もしあなたが彼らの成長を信じて待つことができるのであれば、中傷している人にも同じように信じるよう働きかけましょう。
- 毒性を持つ人を特定してよく観察し、彼らの与える損害が広がらないように注意します。次に、彼らが関心を持っていることを特定し、議論の場を持ちます。コミュニケーションの問題を1 つずつ取り除いて、彼らの心配を落ち着かせます。
(アート・オブ・コミュニティ、p240)
これらの話はコミュニティ内部における対立にフォーカスしていますが、コミュニティ外部との対立についても全く同じ話が適用できます。
なぜこのようなことを書いておこうと思ったかというと、下記リンク先の青空文庫に対する批判とそれに対する反論などを読んだからです。
私個人の意見としては、批判に対して反論されている方とほとんど同じ意見です。
青空文庫の提案には、青空文庫の理念が書かれています。
電子出版という新しい手立てを友として、私たちは〈青空の本〉を作ろうと思います。
青空の本を集めた、〈青空文庫〉を育てようと考えています。青空の本は、読む人にお金や資格を求めません。
いつも空にいて、そこであなたの視線を待っています。
誰も拒まない、穏やかでそれでいて豊かな本の数々を、私たちは青空文庫に集めたいと思うのです。先人たちが積み上げてきたたくさんの作品のうち、著作権の保護期間を過ぎたものは、自由に複製を作れます。
私たち自身が本にして、断りなく配れます。
一定の年限を過ぎた作品は、心の糧として分かち合えるのです。
現在青空文庫で行われている活動はこの理念になんら反していませんし、この理念を理解していれば最初の批判のようなものが出てくるというのは的外れのように感じます。
だからといって批判者に対し批判で返していいのかとも思います。
- 批判された方は本当にこの理念を理解していたのか?
- 理解していないのであれば、それをまず説明するという選択肢はないのか?
- そもそも、もっと上記ページがわかりやすいところにあればこのような批判は出なかったのでは?(ちなみに上記ページは、初めての人が読むページである青空文庫早わかりのかなり下の方にあります)
などなど、考えるべき点は色々あるんじゃないのかと思うのです。
もちろん私は青空文庫コミュニティには一読者として以上の貢献はしておらず、関係者から見れば上記の指摘もまた見当外れな妄言かもしれませんが、その場合はご容赦ください。
この記事の主旨は青空文庫コミュニティの運営の話ではなくコミュニティ運営全般の話です。
だから私が最も関心のある hadoop コミュニティでも、こうした話は常々気をつけなければいけないことだと思っています。
批判が出ることはコミュニティを育てるチャンスなのです。
健全なコミュニティを育てるためにも、批判はありがたく受け止めていきたいと思います。
最後に、「アート・オブ・コミュニティ 9章 対立への対処」で引用されているナポレオンの言葉を再引用させていただきます。
あなたが恐れるべきは、賛同しない人ではなく、賛同しないで、なおかつ臆病さからあなたに知らせようとしない人である。
―― ナポレオン・ボナパルト
アート・オブ・コミュニティ ―「貢献したい気持ち」を繋げて成果を導くには (THEORY/IN/PRACTICE)
- 作者: Jono Bacon,渋川よしき
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2011/05/26
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