前回バグレポートの提出方法というテーマで記事を書きましたが、今回は英語にフォーカスして少し書いてみることにします。
英語の学習法は数多くありますが、もし英語を学ぶ目的が「IT の技術系メーリングリストに投稿し、議論する」ことが目的でしたら少しだけ楽な方法があります。
それは、技術系メーリングリストを片っ端から登録し、辞書を引くたびに検索をかけ、自分独自の例文集を作成することです。
ある特定のクラスタ内で他人とのコミュニケーションをとるとき、そのクラスタ固有の用法が生まれることがあります。例えば日本語においても、ITの技術系クラスタで使う英語と他のクラスタ、例えば家族、大学の友人などの集団に属しているときに使う言葉は異なります。「割り当てる」という単語は、IT 系のクラスタでは頻繁に見かけますが、この単語を家族間で使うことはあまりないでしょう。方言なども、あるクラスタでは多用するが他のクラスタでは使わないものの一例です。
英語の技術系メーリングリストにおいてもこの法則は適用されます。英単語の頻度、用法などは、一般的な英語と技術系メーリングリストとの間では異なります。こうした背景を踏まえて、私は技術系メーリングリストに限定した英語の例文集・用例集を独自に作成しています。
方法は本当に簡単です。
- 技術系メーリングリストを購読する
- とりあえず読む
- 知らない単語が出てきたら、辞書を引いた後にメーリングリストに検索をかける
- 自作の例文集に登録する
技術系メーリングリストを購読する
まずは技術系メーリングリストを購読してください。
これは読むためのものではなく、自分独自の例文検索データベースだと思ってください。私は現在、hadoop 関連だけで 41 のメーリングリストに登録しています。ある程度メール保存領域に余裕があり、比較的高速に検索できるwebサービスを活用するといいでしょう。私は gmail を使っていますが、もしかしたら今は他にもいいメールサービスがあるかもしれません。
とりあえず読む
気合を入れて全部読む! なんてことをするとまず挫折するのでやめましょう。気が向いたときに読む程度でいいです。
注意点としては、通じる英語を使っている人が誰かをきちんと見極めることです。英語ができないのは何も日本人だけではありません。世界中の人が、辞書を引きながらたどたどしい英語を使っています。そういう英語を覚えても意味がありません。
技術系メーリングリストの場合、質問に答えている人を押さえておけば大体間違いないでしょう。質問に答えている人は大抵の場合そのコミュニティに比較的長くいて、技術力もあり、回答できるほど英語に自信のある人です。その人の使う英語はほぼ間違いなく他の人にも伝わると思っていいでしょう。
知らない単語が出てきたら、辞書を引いた後にメーリングリストに検索をかける
これは別にメーリングリストを読んでいるときに限りません。日常生活でも辞書を引くことは多々あります。その際にもう一手間かけてメーリングリスト内で単語検索をかけてください。
このときにまず注目すべきは、ヒットした件数です。
単語のヒット数が少ないということは、その単語は少なくともそのメーリングリストではあまり使われないということです。逆に単語のヒット数が多ければ頻出の単語であることがわかります。これらの情報を記録しておいて、いざ文章を作成する際には頻出の単語を用い、あまりヒットしない単語を避けるといいでしょう。
自作の例文集に登録する
最後が一番重要です。ヒットしたメールを読んでみて、その単語が使われている一文を例文として記録してください。
記録方法はなんでもいいです。私はテキストファイルにベタ貼りしていますが、evernote などに記録しておいてもいいでしょう。こうしておけば、いざその単語を使うときにどういう文脈で使えばいいか分かります。
例えば、「reside in A」というフレーズを見てみます。
辞書を引くと、「A に属する」とか「A に存在する」という意味のようです。しかしこれでは、belong to や exist in などとの違いが分かりません。
ここでメーリングリストを検索してみると、いくつかの結果がヒットします。ここ1年で40件ほどヒットしているので、多用はされていないもののそこそこの頻度で使われていると言えます。
次に、実際の用例を見ていきましょう。
HBase のユーザメーリングリストでは、このように使われていました。
On the other hand, if you're talking about an arbitrary number of tables (i.e. data would reside in different tables depending on the specific content of A, B and C), then that may be a different story.
「データが異なるテーブルに属する」
という使われ方をするようです。
もう一つ、ZooKeeper の JIRA から別の例を引いてみましょう。
in my case aclocal does not reside in /usr/local... (ubuntu natty) but rather /usr/share
「aclocal は /usr/local 内に存在していない」
という使い方をしていますね。
このように見ていくと、少なくとも技術系メーリングリストにおいて「A reside in B」というフレーズは「A (データ、ファイルなど) が B に属している、B 内に存在している」といった使われ方をすることがわかります。
まとめ
技術系メーリングリストにおける英語の学習法について簡単に紹介しました。
購読して、検索し、例文集を作るだけで、比較的簡単に通じる英語について学習することができます。ある程度慣れてきたら、後は実戦あるのみです。どんどんメーリングリストに投稿して、議論に参加してみてください!